<全国高校野球選手権:高崎健康福祉大高崎10-0利府>◇18日◇2回戦

 走って、走って、走りまくって、高崎健康福祉大高崎(群馬)が「機動破壊」を決めた。大会記録にあと2個に迫る11盗塁をマークし、15安打を絡めて、利府(宮城)に大勝。プロ注目の脇本直人外野手(3年)は4盗塁を決め、同校初の16強進出を決めた。

 3歩、4歩、5歩と一塁ベースからリードを広げた脇本が、投手の足が上がった瞬間にスタートを切った。1回1死一、三塁、50メートル6秒1の俊足で悠々二塁ベースに到達すると、犠飛で先制した直後に三盗を決める。5番柘植の右翼線二塁打で、ホームを踏んだ。

 「結構(投球フォーム)盗みやすくて、けん制があまりなかった。ピッチャーが足を(高く)上げて投げていたので、自信を持って走りました」

 1回に4盗塁を決めて3点を先取すると、3回は3盗塁を絡めて2点を奪った。53年に土佐(高知)がつくった13盗塁の大会記録に迫る11盗塁を決めて、チームテーマの「機動破壊」を甲子園で体現した。

 1回戦の4盗塁に続き、これで2試合15盗塁と驚異的なペースで量産する。投手を除くスタメン8人の50メートル平均タイムは、6秒3。選手個々の能力に加え、試合前には相手校のビデオで投手のクセや捕手の二塁送球タイムを徹底分析。A4判用紙5枚ほどに、全選手の特徴をピックアップする。捕手からの二塁送球は1・8秒台を成功の目安とするなか、脇本は「2秒02でした。楽勝です」と笑った。

 青柳博文監督(43)は「強打のチームを毎年つくるのは難しいが、走るチームは練習すればできる」と言う。本格的に走塁練習に着手したのは5月から。連日2時間以上、走るフォームを固めるために体幹を鍛え、最初は投手を置かずに、手をグーからパーに変えた瞬間にスタートを切る練習から始めた。スライディングはスピードを緩めず二塁に滑り込む。脇本は「5枚ぐらい破れました」と、ユニホームのズボンはボロボロになった。群馬大会では6試合35盗塁と走り続け、甲子園に乗り込んできた。

 サインは基本的に走れたら走れの「グリーンライト」。右投手に対しては一塁リードが4メートル30センチ、左投手は5メートル以上と、重圧を掛ける。4盗塁を決めた脇本は「次の試合で決めたい」と、次戦での大会記録更新を宣言。黒土にまみれたユニホームで、不敵な笑みを浮かべていた。【前田祐輔】