<センバツ高校野球:平安0-8聖望学園>◇1日◇準々決勝

 「ラスト平安」の戦いが終わった。校名が正式に「龍谷大平安」に変わったこの日の準々決勝で聖望学園(埼玉)に完封負けし、34年ぶりの4強入りはならなかった。創部100年を迎える年に古豪の歴史は一つの区切りを終えたが、校名変更後もユニホームの胸の「HEIAN」は変わらず。春季近畿地区大会京都府予選から、新しいスタートを切る。千葉経大付は長野日大に7-0から追いつかれたが延長11回、サヨナラ勝ちで初の4強を決めた。

 ベンチも応援団も、思いはひとつだった。9回、普段なら得点圏に走者を置いた場面で繰り出すテーマ曲を、応援団はイニング最初から演奏した。ブラスの響きに押されるように、先頭の丸本憲三塁手(3年)が中前打。三塁コーチャーとしてチームを支えてきた代打の小川隆太朗(3年)が併殺に倒れても、山口篤史主将(3年)が内野安打で塁に出た。1秒でも長く戦い続けようと奮闘する選手を見ながら、原田英彦監督(47)は目を潤ませた。

 「100年の歴史の最後を甲子園で終えられてよかった。最後はみんなを出してやりたかった。みんなで戦いたかった」

 エース川口亮(3年)が2回につかまった。外角への変化球が決まらず、2死からの4被安打で4失点降板。打線も5回まで完全に抑えられ、散発3安打完封負け。「手も足も出ませんでした」と山口は泣いた。

 それでもナインが得た古豪の誇りは揺るぎない。就任当初、原田監督は後輩ナインを連れて各地の名門校を回った。他の名門を知り、母校愛を育てるため。松山商(愛媛)の手入れの行き届いたグラウンドに目を見張っていたら、ネット裏の老若男女の野球部ファンが「平安のみなさんか、よく来なさったね」と声をかけてくれた。愛し愛される、こんなチームになろうと後輩ナインを育ててきた。説き続けた平安のユニホームへの思いをこの春、選手も共有。1戦ごとに強くなり、8強に駆け上った。

 監督の右腕で、代打に起用された小川は「今までの平安の伝統とプレースタイルが変わることはありません。夏に必ず、帰ってきます」と誓った。新しい歴史が始まる。【堀まどか】