<センバツ高校野球:千葉経大付2-4聖望学園>◇3日◇準決勝

 聖望学園(埼玉)が4年ぶり17校目となる初出場初優勝をかけ今日4日、沖縄尚学(沖縄)と対決する。エース大塚椋司(3年)が千葉経大付(千葉)戦で5回まで無安打の力投。相手の追撃を2点に抑えて逃げ切った。聖望学園が勝てば、埼玉勢として40回大会(68年)の大宮工以来の優勝となる。

 決勝進出まであと1人のときだった。聖望学園ベンチは田中信之助(3年)を伝令に走らせた。そのアドバイスはマウンドの大塚の思いと同じだった。「1人に集中して三振を取ろう」。9回2点差に迫られ、なお2死二塁のピンチ。大塚は武器のカットボールを投げ続けた。4球目、最後は千葉経大付・重谷祐弥(3年)のバットが空を切って決勝進出が決まった。

 「もう気持ちで投げました。はい、三振を狙いました」。この日も笑顔の投球を続けたエースが3連続三振を振り返った。準々決勝(対平安)同様に5回までは無安打、最速145キロ。ただストライク、ボールがはっきりしていた。原茂走捕手(3年)も「シュート回転して、内角を攻められなかった。スピードも落ちていた」と感じていた。

 4試合目、球数は476球を数えた。大塚は「疲れはないです」というが、前日(2日)には電気治療を行った。前夜、恒例の城戸愉快一塁手(2年)のマッサージを忘れ10時すぎに寝てしまった。この日朝6時15分からの散歩に出ると、城戸が飛んできた。「大塚さん、やりましょう」。後輩のマッサージを受けなかった昨秋の花咲徳栄戦、慶応戦は負けた。城戸は無安打に終わりながら「勝利のマッサージ」ができたことを喜んだ。大塚も「ほんと、みんなに助けてもらって。このチームじゃなかったらここまで来られなかった」。

 応援席では、母成美さん(45)が原茂捕手の母治美さん(55)と抱き合って涙を流した。成美さんは「頑張ってとメールを送ったら『了解です』と返事してきたんですが。明日も亡くなった主人(明世さん=享年52)に見守って欲しい」と話した。少年野球チームのコーチを務め、大塚の甲子園出場が父の夢だった。

 大塚は「ここまで来たことを伝えたい。明日?

 心の底から楽しみたいです」と話した。エースが決勝戦も笑顔で投げ抜くなら、埼玉に40年ぶりの優勝旗がもたらされる。【米谷輝昭】