<高校野球大分大会:日田林工6-5柳ケ浦>◇19日◇準決勝

 劇的王手だ!

 準決勝で、日田林工とノーシード大分雄城台が、ともに9回逆転サヨナラ勝ちした。日田林工は6番・野上康平(1年)が右前に殊勲打を運び、9年ぶりの決勝へ進出した。

 最後は1年生が決めた。9回2死一、二塁から5番立川政樹(3年)の左前打で同点。日田林工スタンドが沸き上がる中、続く野上が右前に打ち返し二塁走者の末次群(3年)を迎え入れた。「3年生と1日でも長く試合がしたかった」。殊勲の野上は、まだあどけない表情で振り返った。

 本来は捕手が本職の1年生が、投手陣を救った。5月から打撃を買われ一塁手のレギュラーとなったが、練習試合ではエース末次ら投手陣ともバッテリーを組んできた。末次と太田尾郁弥(3年)の継投で逃げ切ってきた勝利の方程式が崩れかかった土壇場での一打に、佐藤衆二監督(55)は「1年生が3年生を助けてくれた」とたたえた。

 3年生を思う気持ちは人一倍強い。2歳上の兄友貴は福岡・北筑の外野手として今夏の予選に出場。11日の3回戦で敗退した。「兄からは『お前に期待しているよ』と言われてました」。高校野球を終えてしまった兄の無念も後押しした一打。今夏最長の6回0/3を投げ3失点だったエース末次も「よく打ってくれた」と感謝した。

 準々決勝まで3試合で7打数無安打と、チームで唯一当たりがなかったが、佐藤監督の「(打たなかったら)外すぞ」というゲキにようやく目覚めた。劇的な決勝進出に「最後まで粘れといっていた。勝負どころで打った打線も、ようやく上向いてきたかな」と佐藤監督。末次-太田尾の必勝リレーと呼応するように、決勝を前にようやく打線がつながった。【村田義治】