<高校野球茨城大会>◇12日◇1回戦

 常総学院が5連覇へ好発進した。8年ぶりのノーシードとなったが、水海道一に10-0で6回コールド勝ち。この日、79歳の誕生日を迎えた名将・木内幸男監督は初戦から「木内マジック」を披露。11日にスタメン起用を決めた4番大野幸男外野手(3年)が4打数3安打1本塁打と大活躍し、初戦突破に大きく貢献した。

 79歳になったばかりでも「木内マジック」は健在だった。1回、2点を先制してなおも無死二塁。11日にスタメン起用を告げられた大野が、左翼席へ完ぺきに放り込んだ。状況に応じて起用法を決め、選手がそれに応える。甲子園で春夏通算40勝。幾多のミラクルを起こしてきた采配が、初戦から決まった。

 「一番休んでいたのが打つんですから、野球は分からない」としてやったりだ。大会直前に歯茎を手術した大野は、スタメンから外すつもりだった。だが、休んで疲労が抜けたことでスイングは鋭くなっていた。それを見抜いて起用するや、4打数3安打3打点の大当たり。二塁打が出ればサイクル安打だった。大野は「誰がバースデーアーチを打つか、みんなで話してたんです。まさか自分が打てるとは」と喜びに浸った。

 試合はもちろん、練習でもグラウンドを動き回ってげきを飛ばし続ける。03年に勇退後、総監督を務めた4年間で脳梗塞(こうそく)を患い、腎臓がんを摘出した。「これ(野球)しかない、自分がときめくものは。野球に勝るものはない。うちには81歳(本田有隆投手コーチ)の最長老がいますから。2人が一番元気ですよ」と豪快に笑う。学校に帰ると、孫ほどの年の選手から、バースデーソングとシャツや栄養ドリンクなどのプレゼントを贈られた。野球を愛する気持ちは、世代を超えて伝わっている。

 今年は8年ぶりのノーシード。6回コールド勝ちにも、バントのミスなど詰めが甘かったことに「優勝するチームになってない。今年のチームは教えると消化不良になるので、半分も教えていない。時間はあるので、本当の野球を身につけさせます」。夏5連覇まであと7勝。79歳の甲子園勝利は史上最高齢記録になる。百戦錬磨の名将の夏が、始まった。【今井恵太】