地方大好き、富山大好き左腕が首位浮上に貢献した。阪神先発能見篤史投手(36)が4回、中前に2点タイムリー、投げては8回途中2失点。左ふくらはぎがつって無念の降板となったが、2年前も白星を挙げた富山で今季5勝目だ。

 富山の女神は、また“意地悪”を仕掛けた。快投を続けていた能見に突然のアクシデントが襲う。7-1で迎えた8回、代打小窪に死球を与え1死満塁としたところだった。マウンドで能見が首をひねった。左ふくらはぎがつり、降板を余儀なくされた。

 「昨日(23日)、ブルペンを使っていたのが頭にあった。何とか最後までいきたかったんですけど…」

 試合後、チームバスに乗り込む能見は悔しさを口にした。それでも地方球場ではやっぱり強かった。この日はバットでも光った。4回1死二、三塁で打席が回ってきた。広島野村のど真ん中直球を見逃さない。鋭い打球は前進守備の間をライナーで抜けて中前へ。二塁走者今成のホームインを届けると、一塁上で手をたたいた。

 貴重な2点適時打に「たまたま当たってくれました」と振り返ったが、たまたまではないはずだ。ある時グラウンド横で能見がバント練習に励んでいると「(巨人)マシソン」と口にした。ベースから2、3歩前に出た。150キロ超えの直球を投じる巨人マシソンにピッチングマシンを見立てた。9番目の打者として役割を果たすために1球1球に集中した。走者を進めるだけではなく、得点をももぎ取って見せた。7回1/3を4安打2失点で今季5勝目を手にした。これで13年5月12日ヤクルト戦(松山)から地方球場での先発登板で4連勝だ。

 特に富山は思い出の地だ。2年前の13年6月25日中日戦。このマウンドに立った。9回1死まで1失点と好投していたが、中日和田の打球が足に直撃して降板。「足に当たって降板したのは覚えてますよ」と笑って振り返っていた。この日は左ふくらはぎをつった。2度のアクシデントに見舞われた富山のマウンド。それでも白星を手にし「いいイメージのままいけたので良かったですね」と笑った。再び、富山の虎党に躍動する姿を見せつけた。【宮崎えり子】