浅村は「今日は自分だけでなく、いろんな選手が持ち味を生かし、勝つための役割を果たした」と強調する。

 3回には栗山もバントを決めた。外崎がその好機を生かし、適時打を放った。源田は逆転を許した直後の6回、俊足を生かした三塁打で出塁。同点に導いた。

 好投していたウルフが右脇腹を痛めて緊急降板しても、中継ぎ陣が踏ん張った。浅村と同様、他の選手もそれぞれが「勝つためにできることは何か」と考えを巡らせ、使命を全うした。

 辻監督は「浅村があそこまでやれば、他のみんなも気持ちは高まる。考え、思うところも自然と出てくるでしょう」と話した。

 中村も「アサがやってくれたから、自分も必死でゴロを打った。主将になったからといって、あいつのプレーや取り組みがそんなに変わったとは思わない。でもあのバントを見せられると…。やっぱり覚悟みたいなものは感じますよね」と振り返る。

 8回に一時勝ち越しの左越えソロを放った炭谷は「本塁打はたまたま。それよりもみんなで野球ができていることが大事」とうなずく。秋山などは「あのバントは、チームにとってすごく大きなイベントだったと思う」とまで言った。

 浅村は3回の第2打席で、初球を左越え本塁打。1点を追う6回の第4打席でも、貴重な同点右犠飛を放った。しかしそれ以上に、初回のバントが周囲に与えたインパクトは大きい。

 3年連続Bクラスだったチームは、辻監督のもとで生まれ変わろうとしている。もしもそれが成功したなら、主将浅村のバントはチーム改革を加速させる「スイッチ」になったと評価されるかもしれない。【塩畑大輔】