名実ともにソフトバンクの正捕手へ。今季売り出し中の甲斐拓也捕手(24)が、球団では09年田上秀則以来となる年間100試合スタメンマスクを目指す。ここまで53試合に出場し、先発は44試合。達成には残り65試合で、56試合で先発マスクをかぶる必要がある。育成からはい上がった男が、チームの首位取りとともに、新たな歴史の扉を開く意気込みだ。

 甲斐は現在、14試合連続でスタメンマスクをかぶり、正捕手と言えるまで成長してきた。今季、ここまで捕手で出たのは53試合。そのうちスタメンは44試合とチームで一番多い。「楽しいということはないけれど、充実感は本当にある。幸せですね」。6日もヤフオクドームの室内で約30分打ち込んでから、7日からの日本ハム3連戦に向けて札幌へ移動した。

 あと56試合スタメンマスクをかぶれば、09年田上以来のスタメンマスク100試合に到達する。それ以前は05年城島健司までない。細川、鶴岡と他球団から経験ある捕手が加入してきた中で、今季この数字を超えれば、待望の若き正捕手誕生となる。甲斐は「何試合という目標はないが、出続けたい」と意欲を見せる。

 育ててきた清水バッテリーコーチは「100という数字はできるだろうけど、精神的にも体力的にもここからがきつい。クセはどうしても出るし、誰でも出る。後半戦、相手がどう対策を取ってくるのか」と話す。リードの傾向が相手球団に知られたここからは、それを逆手に取るなどして対策を立てる必要がある。

 甲斐の魅力はなんといっても強肩だ。盗塁阻止率はリーグトップの4割7分6厘を誇る。(10盗塁刺、11盗塁許)。甲斐がマスクをかぶることで、相手が足技を仕掛けにくくなっているのも、チームにとって大きなプラスとなっている。

 「疲れても食べているんで」と体重は先月よりも1キロ増えている。入団時から、球団OBでもある野村克也氏の著書を多く読んでいる。現在は、城島健司氏の著書を勉強中で、多くの先輩の知恵を学んでいる。右手中指骨折で離脱中の高谷も2軍で実戦復帰。ベンチには鶴岡も控えている。100への道のりはハードルも高いが、不屈の男が鷹の歴史に新たな1ページを加える意気込みだ。【石橋隆雄】