阪神岩貞は笑顔なき白星を挙げた。表情を変えずに東京ドームの通路を歩く。「捕手に助けてもらう展開になった。長いイニングを投げられない悔しさがあります」。制球が定まらず、苦しい投球だったが、5回1失点の粘投。7月2日ヤクルト戦以来、約3カ月ぶりの今季5勝目を挙げた。

 序盤から思うように球を操れない。1回、いきなり連打を浴び、1死一、三塁のピンチを背負う。阿部を外角低めスライダーで二塁併殺打に料理。2回、先頭村田にソロアーチを被弾すると、変化球主体の投球に切り替えた。「(梅野が)試合のなかで、感覚を合わせていけるようやってくれた」。巨人打線は右打者を7人並べてきた。膝元へのスライダーを多投させて感覚を保ち、外角には直球、チェンジアップを配した。

 崩れるわけにいかない。東京ドームの巨人戦ナイター。8月8日は4回6失点KOで、試合中に強制帰阪を命じられる屈辱を味わった。この日も同じ舞台だ。1点リードの5回2死一、二塁で阿部への初球はカーブ。間合いをずらし、二飛で切り抜けた。「ピンチでも1人1人、打ち取ることを考えていた」。直球は上ずり、逆球も目立つが踏ん張ってリードを死守した。

 今季は先発の軸に期待されたが、不振が長引き、2度の2軍落ち。チーム最多のシーズン10敗が苦闘の表れだ。金本監督は「制球に苦しんでいたが、悪いなりに、何とか5回をね。梅野もしっかりリードしてくれて、どうにか持ったという印象」と話す。CSはロングリリーフ要員の可能性もある。意地を試される日々はまだ続く。【酒井俊作】