スーツを2着、新調した。エクセルの勉強も始めた。

 ロッテ黒沢翔太投手(29)は「育成から入って7年間。われながら、よく頑張ったなと思います」と穏やかに振り返った。1月からは、球団スタジアム部に配属。ZOZOマリンの飲食にかかわる管理や企画などを受け持つ予定だ。

 ロッテでは引退した選手が球団に残る場合、打撃投手や用具係などの裏方がメインだった。職場の活性化を目指し、今回から球団職員としての採用も始めた。営業職に就く古谷とともに入社する黒沢は「選手の経験を生かして、職員と選手の間に立てる。選手はこう思っているとか、選手はもっとこういうことがやれるとか、提案したい」と“懸け橋”になるつもりだ。

 変化を恐れない生き方は、選手生活でもそうだった。10年育成ドラフト1位で入団。1年目の春季キャンプ初日。特長を見抜いた西本2軍投手コーチ(当時)から「サイドにしよう」と言われ、上手投げから転向した。すぐには結果が出ず、何度かクビを覚悟。3年目の7月30日、支配下を勝ち取った。期限まで残り1日だった。「サイドにしてなければ、もっと早くクビになったかも知れない。後押ししてくれた」と西本氏に感謝している。引退を報告し、同氏の「よく頑張った」の言葉が染みた。

 思い出は、13年の1軍デビュー戦。そして、昨年8月の日本ハム戦で、大谷に特大の1発を打たれたこと。「内角スライダー。良いコースだったんですけどね」と笑った。思い出の詰まった球場で、新たな1歩を踏み出す。【ロッテ担当 古川真弥】