硬式野球でリーグ8連覇を達成した富士大(岩手・北東北)の佐藤龍世内野手(3年=北海)が、平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)に出場する同い年のいとこにエールを送った。スピードスケート女子3000メートルに初出場する佐藤綾乃(21=高崎健康福祉大)は父方のいとこに当たる。兄と同様に富士大へ進学する弟大雅(北海3年)とともに幼少期からスケートリンクに立った幼なじみで、佐藤兄弟はメダル獲得を期待した。

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 佐藤兄弟は心の底から、いとこの綾乃を応援していた。兄龍世が「いつかは五輪に出ると思っていた。メダルを取ってほしい」とハッパをかけると、弟大雅も続けた。「綾乃は子供の頃から人一倍努力していた。落ち着いて自分の力を出せれば、表彰台は大丈夫」とゲキを飛ばした。

 佐藤兄弟の父貢さんと、綾乃の父文則さんが兄弟で、3人はいとこの関係だ。北海道厚岸町の実家はお互い徒歩5分と近く、幼少期の頃から3人でスケートリンクに通う仲だった。「小さい頃から一緒にスケートを滑ってきた。子供の頃に女の子に抜かれないけど、綾乃には小3で負けて、悔しかった」。龍世は小4で野球との両立を断念したが、今やプロ入りの扉を開こうとしているドラフト候補だ。

 龍世の3学年下に当たる大雅も二刀流だった。中2のスケート全国大会5000メートルで10位に入り、将来は五輪選手を狙えたが、中3の終わりに野球一本に絞った。龍世が高3夏の南北海道大会で初戦負けして号泣する姿を見て、大雅は腹を決めた。「兄のリベンジをしたかった。スケートをやめて、野球に専念することに決めた」。すると高2夏に強肩強打の正捕手として甲子園準優勝に輝き、綾乃からは激励のメールが届いた。4月から再び兄の背中を追って富士大へ入学し、すでに練習参加している。

 本番へ刻一刻と近づいている。龍世は激励の色紙に“目指せ表彰台”と書き込み、大雅は“自分に負けるな”と力を込めた。代表入りが決まった時に祝福のラインを送った龍世は、良い意味でのライバル心を抱いていた。「五輪選手には、なりたくてもなれない。すごいこと。自分も負けられない」。競技は違えど、いとこ同士での切磋琢磨(せっさたくま)が、佐藤兄弟をさらに成長させる。【高橋洋平】