阪神が球界屈指の巨人菅野を攻略して快勝発進した。2回、福留孝介外野手(40)が先制の1号ソロ本塁打を放つなど、菅野に12安打を浴びせて5得点。オープン戦では2勝12敗2分け、チーム打率2割2分5厘で最下位に沈んだが、開幕戦では37年ぶりとなる先発野手全員の13安打と打ちまくった。1月に亡くなった元監督の星野仙一氏に優勝を誓った金本監督の下、13年ぶりのリーグ制覇へ力強く1歩を踏み出した。

 東京ドームの半分を埋めた黄色が一斉に立ち上がった。打球がポールを直撃すると、メガホンの揺れは一気に激しさを増した。大歓声に包まれ、主役の福留はダイヤモンドを静かに1周。激しいハイタッチの列では、最後にロサリオと熱い抱擁だ。2回1死。菅野の外角高めに踏み込み、左翼ポールにぶち当てた。今季1号の決勝弾だ。

 「何とか塁に出ようと。うまくつかまえて、切れてくれるなと思いながら走っていたけど。ポールに当たってくれてよかった」

 好投手相手の好球必打。背中で語ったのはそれだけではない。試合前の出陣式。都内のホテルの一室に集まったナインに、福留は声を上げた。揚塩球団社長が「巨人を倒して全国の阪神ファンに喜んでもらおう。天国の星野さんにも喜んでもらおう」と熱く語り、金本監督が「何が何でも優勝しよう」と呼び掛けた後、「ここにいる裏方さん、選手の家族、そしてタイガースファンを喜ばせられるように頑張っていきましょう!」と言った。優勝出来れば何でもいい、とまで語った執念が乗り移り、打線は次々につながった。

 言葉で鼓舞し、背中で語る姿は、闘将と呼ばれた星野監督と同じだ。「僕の言葉は監督に言われた言葉」と言って笑う。嫌われることもおかまいなしで若手選手に伝えてきた。「伝えていく。それが役割だと思っているから」。キャンプ中にはルーキー選手と裏方スタッフを連れて、食事に行った。裏方への感謝。それも監督の教えのひとつだった。「何でもそう。誰かが何かの助けをしてくれている。感謝の気持ちは忘れてほしくない」。気持ちを乗せた結果で感謝を伝えた。

 快音は止まらず、3回、5回にも中前打を放ち3安打の活躍。2年連続で開幕戦3安打1本塁打だ。40歳11カ月の開幕戦本塁打は、球団では09年金本に次ぐ2番目の年長記録。福留は最後まで「若い選手がつながってくれたんで、それはすごく良かった」とチームに気を掛けた。汗を吸った胸のCマークが、何より頼もしい。【池本泰尚】