金本采配もズバリだ。巨人エース菅野攻略へ高山俊外野手(24)を1番起用。背番号9が1点リードの2回2死満塁、一塁へヘッドスライディングする適時内野安打で2点目をもぎ取った。対菅野に3割3分3厘の好相性と過去2年連続開幕戦で初回先頭安打を放った底力への期待に見事応えた。金本監督は出陣式で「優勝するのは俺たちや」とナインを鼓舞。最高の白星発進で3年目Vへ突き進む。

 泥まみれのユニホームが執念の表れだ。1点を先制した直後の2回2死満塁。1番に抜てきされた高山が菅野の低めスライダーに何とか当てると、二塁前へ高くはずむゴロになる。ギリギリのタイミング。気迫のヘッドスライディングで適時内野安打を勝ち取った。

 「先に追い込まれてしまったので、とにかく必死に食らいついて、打ちにいきました。『何とか』という気持ちでした。セーフになって、良かったです」

 金本監督のサプライズ起用がハマった。開幕1番での起用は、この日の昼間に決めた。都内ホテルの一室でコーチ陣がミーティングを行う。指揮官は高山の1番案を提案。「投手コーチの意見も聞いて。どういう打線を組もうか迷っていたので」。難攻不落の巨人菅野が相手だ。昨季、7打数4安打で打率5割7分1厘の好相性も後押し。2月の沖縄・宜野座キャンプ以降、実戦で1度も1番に座っていない。指揮官も言う。

 「そこが一番、勇気が必要なところで。1回も出してないのかな、1番で。正直、僕のなかでそこが一番ね。1番を打たせていいものかと。彼を信頼して送り込んだわけですから」

 大胆な采配を振るい、リードオフマンとして機能した。開幕1番は3年連続で高山は「試合前に言われましたが、どこでもやることは変わらない」と冷静だ。新人の16年から3年連続開幕戦安打。実に15打数6安打、打率4割と「開幕男」ぶりを発揮した。片岡ヘッド兼打撃コーチも「高山の内野安打が一番のキーになった。(菅野との)相性や昨日の練習の状態の良さに監督がかけた。見事に応えてくれた」と目を細めた。

 プレーボールの約3時間前に、チームは出陣式を行った。金本監督の力強い声が響く。「俺たちは優勝するんだから」。まるで、優勝が既成事実のような口調だったという。「勝って喜んで負けて悔しがって、次の試合でやり返そう。何が何でも優勝しよう。どんな状況でも、最後に優勝するのは俺たちや」。選手は燃えに燃え、開幕戦での先発野手全員安打は81年以来、37年ぶりの猛打で応えた。一丸となって、難敵菅野を7回で5得点と攻略。金本阪神3年目は最高のスタートを切った。【酒井俊作】