首位を行くプライドをにじませた。西武十亀剣投手(30)が今季最多131球を投げ、今季最長7回2/3、7安打無失点。約1カ月ぶり白星の5勝目を挙げ「火曜に早く降りると、1週間がしんどくなる。長いイニングを投げられて良かった。ハムに勝ったのも、上沢に勝ったのも、でかいです」と声を弾ませた。日本ハムとの首位攻防初戦。負ければ再びゲーム差なしとなる瀬戸際を救った。

 絶好調ではなくても投球を組み立てられる。140キロ台中盤の直球は「あまり良くなかった」。その分、変化球をゾーンの両端と低めへ丁寧に集めた。4回無死一、三塁では、レアードをスライダーで浅い中飛。田中賢をフォークで一ゴロ。横尾をカーブで左飛。引き出しをフルに生かし、1点も与えなかった。

 プロ7年目。したたかに投球の幅を広げている。初回1死走者なし。大田をインコースへのスライダーで見逃し三振。意表を突く1球で、顔をゆがめさせた。「うまく使えました。向こうが『あ』てなったら、僕の勝ち」と胸を張った。“インスラ”は交流戦にヒントがあった。「(巨人)菅野投手や(ヤクルト)ブキャナン。インの使い方が面白い。セ・リーグの球場は狭いからインコースは使わないイメージがあった」。固定観念を捨て、相手から学んだ。大田からの三振を皮切りに、4年ぶり2ケタ10奪三振を重ねた。

 辻監督は「球自体は変わらなくても、低めに投げていた。4回の苦しい場面も踏ん張った」と粘り腰をたたえた。まぎれもなく勝利の立役者だが、十亀には悔しさも残る。8回に2死満塁を招き降板。「もう1人。もう1イニング。次への反省です」。3年ぶり完投は持ち越し。反省点があるから、まだまだ成長できる。【古川真弥】