阪神福留が4番打者の仕事を果たした。6月30日以来、今季5度目の3安打。適時打2本でチームの全3得点をたたき出した。

 ベンチ裏からロッカールームに続く階段を福留は口を真一文字に結んで上がった。これだけ活躍しても、あえてコメントは残さなかった。個人で活躍しても試合に敗れては充実感など何もない。勝負の世界を走り続ける男の流儀だ。

 糸井の休養によって、5月18日以来の4番を任された。スイングに精気が宿っていた。いきなり5点を背負う重い展開。その裏に左前打を放ってチャンスを広げると、3回1死満塁では詰まりながらも振り負けず中前にもっていった。反撃の1点だ。そして8回の第4打席。中田の直球を強く振り抜き、2点二塁打。まさにポイントゲッターの仕事だった。

 ことあるごとに「まだまだ若い選手に負けないという気持ちだけは持っている」と繰り返す。

 前日25日は休養のため試合前はグラウンドには現れず、室内練習場で調整した。記録的な猛暑が続き、ベテランに配慮がなされた格好だ。ただここ最近で、太陽から遠ざかったのは前日だけ。甲子園の試合前は、炎天下の練習でも外野でボールを追い続ける姿があった。汗をしっかり出して、試合に向かうコンディションを整えてきた。

 体だけでなく、心にかかる負荷も重いはずだ。41歳になった今季は、74試合に先発出場しているが、すべてクリーンアップ。特筆すべきは4番に座ったときの成績。これが6試合目だが、19打数6安打の打率3割1分6厘。打順別で最も高い。

 5月は死球で左肘を負傷したが、万全ではない中で離脱は避けた。ペナントレースの正念場が続くが、日米で修羅場をくぐってきたベテランの力は欠かせない。【柏原誠】