ビールかけが始まる前の優勝会見。西武辻発彦監督(59)は「今日は喜んでると思います」と穏やかな顔で言った。天国にいる両親のことだ。

母フミさんは、プロに入って試合に出始め、「これから親孝行だ」という頃に亡くなった。

父廣利さんは、監督就任1年目の昨年2月1日、キャンプ初日に亡くなった。最期には立ち会わなかった。「野球が大好きなオヤジだった。(生きていれば)『野球、やってろ』と必ず言ったはず」と、監督としての船出を優先した。今季の優勝は見せられなかった。「残念だけど、大往生だからね」。

オフに郷里の佐賀に帰った際、2人の墓前で語り掛けた。「天国から野球を楽しんでね、とね。勝たせて、なんてお願いするもんじゃないよ」。今季1度だけ、例外があった。優勝マジックが点灯した翌日の9月18日の日本ハム戦。フミさんの命日だった。結果は、7-4で勝利。優勝へ加速した。

今でも、試合前の国旗掲揚の時は両親のことを心に浮かべている。その時、語り掛ける。

「野球を楽しんでね」