最後は壮絶に散った。「SMBC日本シリーズ」第5戦は延長10回、守護神中崎がソフトバンク柳田にサヨナラ弾を浴びた。対戦成績は1勝3敗1分けと崖っぷち。しかし、望みは捨てない。広島会沢翼捕手(30)が奮闘した。6回に自身シリーズ初本塁打を記録した選手会長は、今シリーズで抑え込まれていたソフトバンク武田に1発を見舞った。明日3日からは本拠地マツダスタジアムに戻る。熱烈ファンをバックに逆転日本一を目指す。

コイの兄貴が苦手な第2先発から1発を放った。同点の6回。会沢はソフトバンク武田の内角スライダーをたたいた。高々と舞い上がった打球は、左翼テラス席に吸い込まれた。二塁ベース上で戸惑った様子の会沢は本塁打を確認すると、表情を緩めた。

捕手として投手陣をリードするだけでなく、バットでもチームを引っ張る。2回2死一、三塁からソフトバンク千賀の真っすぐを強振。中堅前にはじき返して、先制点を奪った。「先制点につながるヒットが出て良かったです。うまく反応出来ました」。先発大瀬良を勇気づけた。

広島にとって、短期決戦での第2先発には、苦い経験がある。一昨年は日本ハムのバースの前に勢いを止められ、昨年はCSでDeNA今永の存在で、早まった継投の前に屈した。ソフトバンク武田にも、前日まで3試合で4イニングを無失点に抑えられていた。6回の打席の会沢も3球で追い込まれるも、ファウルで食らいついた。8球目も完璧な当たりではなかったが、左翼ポール際に吸い込まれた。「必死に食らいついていきました。よく入ってくれましたね」。第2先発の呪縛を解いた。

会沢にとってはヤフオクドームの呪縛も解いた。猛打賞を記録した30日第3戦が同球場初安打だった。この日は初本塁打となる1発で完全に苦手意識を拭い去った。今シリーズはソフトバンク捕手甲斐の強肩「甲斐キャノン」が騒がれているが、会沢にはリーグ屈指の打力がある。規定打席未到達ながら打率は3割超、本塁打は球団捕手新の13本を記録した。

マスクをかぶっては投手陣を苦心のリードで支えた。先発大瀬良は5回途中でマウンドを降り、そこからは中継ぎ陣をもり立てた。接戦の中、連勝で勢いに乗るソフトバンク打線相手に細心の注意を払った。敵地で劣勢に立たされる中、頼れる選手会長が攻守に存在感を見せた。【前原淳】