ソフトバンク甲斐拓也捕手(25)が日刊スポーツに手記を寄せた。正捕手としてチームを支え、連続盗塁阻止で日本シリーズ新記録を樹立するなど「甲斐キャノン」で広島の機動力を封じ、日本一に大きく貢献した。進化した「甲斐キャノン」。そして真の正捕手へ。思いを明かした。
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2年連続の日本一を勝ち取れて本当に良かったです。広島が走ってくるのは最初から頭にありましたし、手ごわい打線でした。投手が頑張った結果だと思うし、僕はリードしきれなかったと思うことばかり。いろんな方に、感謝の思いでいっぱいです。思えば14年6月の初めての1軍戦も広島でした。すごく昔のように思えますね。
「甲斐キャノン」と言って注目してもらえるの素直にうれしいですが、盗塁阻止はピッチャーとの共同作業。ピッチャーがけん制、クイック、リズムを変えたり、頑張ってくれた結果だと思います。
スローイングについては昨年と大きく変えた部分はありませんが、投げ方に関しては工夫して、意識しているところがあります。肩で投げるという人も多いけど、ぼくは手首で投げるタイプ。最終的に離れるのは指先だと思っています。結局、指にかかればいい。
僕は練習の時のキャッチボールで全部考えています。肩や肘の状態とか。投げる感覚も毎日違う。キャッチボールで悪い日は、そのまま投げればワンバウンドになる。自分の状態が分かれば、今日はここに投げようとか、ちょっとしたことですけど、その微調整がうまくいく。去年は疲れもあって、正直に言うとだいぶ肩に疲労がきていました。今年も最初は全くうまくいかなかった。1割も刺せなかったんですよね。それでどうしようかなと思って、考えました。
あとは試合前のシートノックで二塁に投げて確認して、の繰り返し。球場によっても変わります。マツダスタジアムは外だし、風もあるし、(ZOZO)マリンとかとも違う。景色も変わります。ベース間の長さは全部同じでも、遠く見える球場、近く見える球場もあります。シートノックで早くそこの感覚をつかむのが大事だと思っています。今回のシリーズではうまくいきましたが、マツダでの第1戦でのシートノックの時に、低く投げても届くなというのが分かった。いつもと一緒でも伸びている感じがあったんです。
最終的に僕は、盗塁されてもホームベースを踏ませなければいいという考え方。それができていたのは元チームメートの細川亨さんだった。そういうキャッチャーになりたい。盗塁されても、最終的にバッターを抑えられたらいいと思っている。点を与えないキャッチャーになりたいです。
開幕当初は高谷さんらがけがで、ほぼ1人でマスクをかぶりました。きつかったでしょう、しんどかったでしょう、とよく言われたんですが、逆でしたね。充実感があった。ああ、野球やってるなという感じでしたね。勝ちも負けも、キャッチャーの責任。負けたらキャッチャーのせいだと思っています。それを全部味わえていた。このピッチャー、このチームを勝たせたい。やられたら、明日はこういうふうにして絶対勝とうと考えていた。キャッチャーとしての充実感がありました。しんどかったとかは全くありませんでした。
僕は全部出て、キャッチャーだと思っています。日本一の瞬間にマスクをかぶって、ピッチャーと抱き合う。そこは今年もできませんでした。味わいたいという、本音の気持ちはあります。まだまだ自分に足りない部分もある。信頼してもらえるキャッチャーになれるよう頑張ります。1年間、応援ありがとうございました。(ソフトバンク捕手)
◆甲斐拓也(かい・たくや)1992年(平4)11月5日生まれ、大分市出身。楊志館から10年育成ドラフト6位でソフトバンク入団。登録名は「拓也」。13年オフに支配下登録され、14年プロ初出場。17年に本名の「甲斐拓也」に登録名を変更。同年はレギュラーとして日本一に貢献し、ベストナイン、ゴールデングラブ賞。今季推定年俸4000万円。170センチ、80キロ。右投げ右打ち。