初の下克上で日本一連覇を達成したホークスだが「短期決戦に弱い」レッテルを貼られていた時期があった。リーグ優勝して日本一となった03年の翌年、プレーオフ制が導入された04年も「リーグ優勝」した。ただし当時は優勝扱いではなく「勝率1位」。優勝はプレーオフを勝ち抜いたチームに与えられた。そのプレーオフで、あと1勝足りず日本シリーズに進出できなかった。ダイエーからソフトバンクとなった05年も「勝率1位」ながらプレーオフ敗退。シーズンだけなら03年から「3連覇」も、短期決戦で屈辱を味わった。

04年、5試合制だった西武とのプレーオフ第2ステージ。2勝2敗で迎えた第5戦で延長10回の末に敗れた。実は第2ステージで戦う両チームに5ゲーム差があれば1位チームに1勝のアドバンテージが与えられていたがゲーム差は4・5。この年、球界再編問題で選手会によるストライキで中止となった2試合がともに西武戦。行われていたら、1勝のアドバンテージを得ていたかもしれない。

05年、第2ステージの相手はロッテで、この年も両者のゲーム差は4・5。あと1歩でアドバンテージは与えられなかった。ロッテに2敗を喫し王手をかけられたが、そこから巻き返し、逆王手をかけた。だれもが「リベンジ」と思ったがまたも1点差に泣いた。

06年から1位球団には無条件で1勝のアドバンテージが与えられることになったが、その年は3位。第1ステージを制したが、第2ステージで1位日本ハムに連敗。沢村賞右腕、斉藤が9回サヨナラ負けで札幌ドームのマウンドに泣き崩れたシーンは有名だ。04、05年のプレーオフでは4番だった松中の不振もクローズアップされた。エース、4番が屈辱を味わった。

その歴史を真逆に塗り替えた。勝率1位チームが優勝扱いとなった後、10年にリーグ優勝を果たすと11、14、15、17年と過去9年間で5度リーグ優勝を果たし、5度日本一に輝いた。「短期決戦に弱い」ホークスが「短期決戦が得意」なホークスに変身した。

若田部投手コーチはいう。「うちは守備がいい。短期決戦はやはり最後は守り。その中で投手陣も自分の力を発揮できている。守りがいいのは心強い」。さらに今年は、内川、今宮と故障者がクライマックスシリーズ、日本シリーズから加わり、活躍。今宮は「しっかり準備できたことですね」と振り返る。コンディションは大丈夫でも気持ちで試合に入るのは難しいが、経験と準備がすんなりゲームに入っていけた。さらに「先のことを考えずに目の前のことに集中することが大事」という。12年からレギュラーを取り、4度の日本一を経験した遊撃手の言葉は重い。

今の勝負強さからは想像つかないほど勝負弱かったホークス。しかし、その屈辱があったからこそ、今年の下克上が生まれたのかもしれない。【浦田由紀夫】