巨人大城卓三捕手(26)が、激戦の正捕手争いに名乗りを上げた。2点を追う8回1死一、二塁、日本ハム・ロドリゲスの145キロを強振。逆方向の左翼に逆転3ランを運んだ。代打で出場した6回の第1打席も右前打で、マルチ安打を達成。地元・沖縄での凱旋(がいせん)アーチとともに二盗も阻止し、東海大相模の先輩でもある原監督に復帰後“初勝利”を贈った。

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沖縄特有の指笛が飛び交うスタンドに、快音が響き渡った。大城は手に残った感触でスタンドインを確信した。「しっかり振り切れたので、いってくれた。結果が出たことはうれしいですし、沖縄のみなさんの声援に応えることができたことが何よりも最高です」。最大音量の指笛と歓声を背にダイヤモンドを回った。

逆方向への1発に魅力が凝縮されていた。「そっち系(速球系)のボールが来るだろうなと思った」と捕手目線で配球を予想。カウント2-1からの145キロを「フルスイングした」打球は左翼席の芝生で弾んだ。ベンチで見つめた原監督に「彼の長所。見事ですよね」と言わせる強烈な逆転3ランだった。

助言にも結果で応えた。沖縄キャンプ3日目の15日、フリー打撃中に監督からトスを上げてもらって指導を受けた。報道陣に「一緒に校歌を歌っただけだよ」とジョークで指導の詳細を伏せた監督だったが、内角球へのバットの出し方を助言。持ち味の強打に新たな引き出しを加えた。

正捕手争いに堂々と加わった。6回の右前打を含むマルチ安打。課題の守備でも8回に二盗を阻止した。炭谷、小林、阿部と過去にゴールデングラブ賞を獲得した先輩捕手との争いはハイレベル。それでも、昨秋、今春と磨いたスローイングで成長を示し、自慢のバットでは期待通りの結果を示した。原監督は「レギュラー捕手争いに名乗り出た、というふうに僕は受け止めた」と認めた。

野球一家で育った。3人兄弟の末っ子で、2歳上の兄、双子の兄ともに東海大相模、東海大でプレー。社会人では別々の会社に進んだが、兄弟の夢をかなえ、スタンドで観戦した両親に雄姿を届けた。覚悟を決めた大城は「(先輩3人は)素晴らしい捕手なので、アピールするしかないです」。突き進む。【久保賢吾】