今秋ドラフトで注目される大学NO・1右腕の明大・森下暢仁(まさと)投手(3年=大分商)が26日、今季初登板を上々の内容で終えた。宮崎・東諸県郡綾町の錦原球場で行われたホンダ熊本戦に先発し、4回を投げ打者13人に対して、被安打3、5奪三振で無失点の内容だった。

前日、えびの市で行われた練習試合後、森下は今季初登板を翌日に控え、課題として「真っすぐで押したいです」と言った。ストレートでレベルの高い社会人の打者に挑む考え。その言葉を念頭に置いたピッチング。ネット裏のスカウト陣は迫力ある球威にうなった。

初回、1死から右前打を許したが、続く3番中島準矢(23=筑波大)を併殺打に打ち取り、この回を9球で終える上々の滑り出し。

2回は4番佐藤大道(28=九州共立大)を三振に仕留める。初球が抜けてボールが先行したが、2球目に力のあるストレートで空振りを奪う。ストライクが欲しい場面で、ストレートで空振りを取れる威力を示した。また、この回は2死一塁の場面で7番菅沼賢一(26=日体大)を迎えると、クイックで初球にストレートで空振りを奪う。走者を置いた場面、クイックでも球威は落ちないことを証明した。

3回には150キロ超のストレートとカーブで社会人打線を翻弄(ほんろう)。9番和田裕生(24=専大)はカウント1-2と追い込んでから、見事に緩急をつけたカーブで空振り三振。「今日はカーブは良かったと思います」と、森下も手応えをつかんでいたが、キレのあるストレートと、ブレーキ鋭いカーブの組み合わせは、今後対戦する打者にとっては手ごわいコンビネーションになりそうだ。

この日、森下は49球を投げているが、その中で森下が納得した場面は4回の先頭打者、2番岡崎集(31=中部学院大)への決め球だった。ボールが先行し2-0と打者有利のカウントから、ストレートと変化球で2球続けて空振りを奪い2-2の平行カウントに追い込む。最後はインコースへの厳しい球。「インコース低めへの真っすぐで、ボールに指がかかってました」。岡崎はスピンがかかったボールに食らい付くが、ボールを捕らえた瞬間に、バットが折れる音が響き、折れたバットがマウンドまで届く中、森下は冷静に処理して投ゴロとした。

「指にボールがかかった時のボールが、自分でも威力があったと感じることができました。そういうボールを投げることができたのは良かったと思います」。

森下のピッチングを見つめた巨人の長谷川スカウト部長は「間違いなく1位で消える選手です。今年のドラフトのトップクラスですね。この時期の150キロ超は素晴らしい。質のいいストレートで、スピンがかかっていて、スピードガン以上に打者の手元で力強さを感じました」と、具体的な点を指摘しながら高い評価だった。

この日は巨人、西武、阪神、ソフトバンク、広島、DeNAの6球団のスカウトが見つめていた。その中で、これまでを2キロ上回る最速153キロを計測。善波達也監督(56)は「低めはボール2つ分低く抑えられていた。クイックでも球威は落ちず、2つのテーマで成長が見られた」と、内容を評価した。

予定では3回までだったが、毎回走者を出していたこともあり、4回まで続投させた。「しっかり3人で抑えろよと。そういう意味を込めて4回も投げさせました。家族も来ていたようですしね」と、善波監督は穏やかに笑ったが、ストレートの力強さ、2つの課題克服、さらには内容も伴ったとあって、万全の初登板にほっとした様子だった。

試合後の森下は、主将としてグランド整備、荷物整理などで率先して動いた後、初登板を振り返った。「153キロ出たのは良かったと思います。でも、ここに合わせてやってきましたから。いい感じで投げることができて、良かったです。これからは、疲れが出た中でどうするか、ですね。疲れが出てきた時の、コンディションを考えながらのピッチングが課題です」。既にエースとしての自覚はもとより、シーズンの先を見据えた、安定したピッチングへの対策に目が向いていた。【井上真】