阪神ドラフト1位の近本光司外野手(24=大阪ガス)が「甲斐キャノン」に挑み、盗塁を決めた。ソフトバンクとのオープン戦に9番センターで先発出場。2安打した打撃だけでなく、チャンスがあれば盗塁を試みることを掲げていたが、有言実行でソフトバンクの千賀-甲斐のバッテリーに挑戦し、二盗に成功した。期待の高まる新顔が開幕スタメンを目指し、一直線に突っ走る。

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近本が迷いなくスタートを切った。加速し、二塁ベースに強くスライディング。あの甲斐キャノンから二塁を陥れた。

近本 初球に走ることが一番。投手にも捕手にもプレッシャーがかかる。内容的にあまり良くなかったんですけど、自分がスタートを切れたのが良かった。

果敢に1歩目を踏み出した。3回。自らのバットで快音を鳴らし、2死一塁とした直後。次打者鳥谷への初球だった。「モーションを盗んでとかではなく、状況判断で、です」。相手は強肩を武器に、育成選手から正捕手に上り詰めた甲斐だ。1秒90~1秒95で速いと言われる二塁送球で、1秒71を記録したこともある。2年連続日本シリーズ制覇にチームを導いたソフトバンクの扇の要。そんな相手にも向かっていった。

50メートル走5秒8のルーキーはソフトバンク戦に向けて「どの捕手、どの投手であれ、いいスタート、いいスライディングをしっかりできれば。どの捕手でも(盗塁に)挑戦していきたい」と意気込んでいた。甲斐は試合後に「足が速いのは新聞を見て意識していました。(対戦して)本当に足が速い。僕も準備していたけど、まだまだでした。向こうの方が上」。球界を代表する捕手にも強烈なインパクトを残したようだ。

好スタートを切れる秘訣(ひけつ)がある。投手から野手に転向した関学大時代。盗塁練習でうまくいかない時期があった。「反応してからの動きだしにロスがあった。できるだけロスを少なく、いかにスピードが出る姿勢に持っていけるかを考えた」。試行錯誤の末、足からではなく、まず頭、上体を二塁方向に傾けるスタート法を見つけた。「グッと体重を二塁(方向)に向けると、自然と足がついてくる。結果的にですけど、その方が速い」。今でも、そのスタイルは変わらない。

甲斐の送球がワンバウンドで遊撃手寄りにそれ、ベースカバーした今宮が捕球できなかったこともあるが、果敢な姿勢が生んだ二盗だったのは間違いない。矢野監督も「チャレンジしていけるのが近本のいいところ。走者で出ると、より楽しみが増える選手」。開幕スタメン目がけたスタートも切っている。【真柴健】

○…近本は打撃でもアピールを重ねた。第1打席の右前打は千賀の「おばけフォーク」に対応したもの。「(フォークには)ビックリして手が出た感じです」と振り返ったが、低めに制球された球を見事にさばいてみせた。実戦9試合で打率は3割2分。打撃力も証明している。この日の2安打について、矢野監督は「よりランナーに出ることを求められるところで、追い込まれてももう1本打てた。近本のいいところがすごく出た」と賛辞を送った。

阪神浜中打撃コーチ(近本の打撃に)「変化球に対応できていて、あまり三振しない。対応力が高いね」