奥川だけじゃない! 広陵(広島)のエース・河野佳投手(3年)が八戸学院光星(青森)との1回戦で、自己最速を2キロ更新する150キロをたたき出した。今秋ドラフト候補にも名を連ねる右腕は、強打を誇る相手打線に3安打8奪三振で完封勝利。星稜・奥川に続く今大会注目投手の1人へと名乗り出た。

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2度の「投手クビ」を経験した右腕が聖地のマウンドで主役になった。初回だ。河野が先頭打者に投じた4球目。内角高めの直球は自己最速を2キロ更新する150キロを計測。「出た感覚はなかった」。スコアボードに表示されると、甲子園にどよめきが広がった。試合中盤からは「直球が狙われているのが分かったので変化球主体。7、8割の力で」。速球にこだわることなく、チェンジアップを勝負球に使った。凡打の山を築き、3安打8奪三振完封で勝利に導いた。

今秋のドラフト候補には意外な過去があった。1年前の4月。1カ月間、投手のポジションを剥奪された。「だめだから。とにかく速い球を投げたがる」。中井哲之監督(56)は当時を振り返る。球速を求め、力任せの投球が目に余った。1度は投手に復帰したが、その後、再び2週間、クビになった。一時は外野手で試合にも出場する期間があった。

河野は涙ながらに訴えた。「もう1回投手をやらせてください」。中井監督に監督室で懇願すると、ゲキが飛んだ。「泣くくらい投手がやりたいなら、頭使って投手をしろ」。これが転機になった。昨夏の県大会3回戦では熱中症を隠しながら投球。降板後、病院に運ばれるほどの体調不良の中で「力を抜いて投げる投球」を学ぶと、チーム内では頭一つ目立つ存在になった。昨秋の中国大会では名門校の背番号1を背負い、優勝に導いた。

チームきっての努力家でもある。コーチ陣がストップをかけないと、いつまでも投げ込みを続ける。この日の試合前には、球場に向かうバスの中でチームメートに「今日は完封する」と宣言した。「背番号1を奪ったからには責任を持つ。次も完封したいけど、1人1人抑えて勝利に導きたい」。球速への欲が消えたことで、150キロ投手の称号を得た。16年ぶりの春制覇へ、右腕の成長は心強い材料だ。【望月千草】

 

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