阪神に来てくれて、ありがとう! 新戦力の西勇輝投手(28=オリックス)が投打に活躍し、チームの連敗を4で止めた。雨の中で粘り強い投球を続け、7回8安打2失点で2勝目。4回には、プロ初タイムリーで中日を突き放した。投壊&貧打に苦しむチームの救世主になった。

    ◇    ◇    ◇

強くなる雨の中でも、西は西であり続けた。移籍後初となる甲子園のマウンド。ぬかるむ足もとにも動じなかった。「フォアボールを出そうが、ヒットを出そうが、粘り強くマウンドに立ち続けていくべきだと思います」。2回に先制を許し、3回以外は毎回走者を出したが、気持ちは最後まで切らさなかった。抜群の安定感で、7回を8安打2失点。「みんなで勝つことができてよかったです」。2勝目はチームの連敗を「4」で止める価値あるものになった。

ひたむきに勝利を目指す姿勢はマウンドだけではなかった。4回だ。バットでも虎党を驚かせた。4回1死二、三塁。中日吉見の直球をとらえ、左翼線に運んだ。プロ初タイムリーで2点を追加。リードを4点に広げた。「たまたまなので、良かったです」。この日、打席に入る際の登場曲を光永亮太の「Always」に変更。アップテンポな曲に合わせて、気持ちよく振り抜いた。

この日は西が心配していた通りの雨空。試合は開催されたものの、ぬかるむ土がスパイクの歯にまとわりつく。投球の感覚にも関わるが、リズムにこだわった。「野手の方が間延びしないように、マウンドで投球テンポを意識していました」。雨が降る中では、土をぬぐったり、顔を拭く動作が増え、いつも通りとはいかない。西はベンチでスコアラーやトレーナーに、テンポが悪くなっていないかを何度も確認した。いい流れを切らないため、多少の土は気にせずに、そのまま腕を振り続けた。

4連敗中は計26失点と投手陣は精彩を欠き、打線も得点力不足に苦しんだ。「先制点を取られたけど、取り返してもらって追加点が入って、いいリズムだった。こういうゲームが続いていくと、勝てるチームになると思う」。そんな苦境で西がチームの推進力になった。矢野監督は「西にも大きいし、チームとしても連敗中だった。西がしっかり止めてくれた。いろんな意味で意味ある1勝だったと思います」と感謝。FA右腕は、甲子園5試合で2勝1敗、防御率1・17と最高のパフォーマンスを見せる。聖地はこんな投手を待っていた。西が虎党のハートもがっちりとつかんだ。【磯綾乃】