矢野阪神が5日、攻めの采配が不発に終わり、交流戦2連勝を逃した。「日本生命セ・パ交流戦」のロッテ戦で1点を追う9回1死三塁で高山の左翼ライナーに走者植田が飛び出し、まさかの併殺プレーでゲームセット。この裏には矢野燿大監督(50)のギャンブルとも言える策があった。中盤まで守備の乱れで、劣勢の展開を招くなど、接戦をモノにできなかった。

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勝負師が繰り出した「大ばくち」は不発に終わった。1点を追う9回、守護神益田を攻めて1死三塁。走者は俊足の植田だ。カウント2-1で矢野監督が動く。高山が打った瞬間、植田が猛然とスタート。だが、強烈なライナーを左翼手清田がダイブ捕球…。植田はすでに本塁に達していた。もう戻れない。ダブルプレーで万事休した。

指揮官はさばさばした表情で言う。「俺がそういうサインを出している。別に(植田)海を責めることはない。俺が走らせて打たせてライナーゲッツーになっているから。俺の責任やから仕方がない。最後の(高山)俊もああいう形でしっかり打ってくれている」。打った瞬間にギャンブルスタートする「当たりゴー」のサイン。何が何でも1点奪うつもりだった。指揮官は最後まで、攻めダルマを貫き、前のめりに倒れた。

明日への糧にすべき黒星だろう。遊撃木浪にとって猛省の夜になった。前日4日、大腸がんから復帰した原口の劇的な一打に沸いた好ムードは1点先制直後の2回裏に暗転した。無死一塁で菅野の詰まった併殺コースのゴロをファンブル。内野安打になったが走者を残し、吉田の打球は三遊間へのショートバウンドだ。難しいゴロを捕れず、左前への同点適時打になった。

なお一、三塁。今度は荻野のゴロを捕球ミス。痛恨失策で勝ち越された。指揮官は「みんな通る道。遊撃というポジションは捕手と同じで、守備で信頼されるようになるためのステップやから」と振り返った。1点差の5回2死一塁ではZOZOマリン名物の強風に惑わされた。レアードの大飛球。左翼手江越が目測を誤って、打球はフェンス直撃…。上空は左翼から一塁方向に風速5~6メートルの風が絶えず吹いた。逆風で押し戻された白球を捕れず、痛恨の加点適時打を許した。

打線は11安打の執念を見せ、投手陣も踏ん張った。矢野監督も「やることはやった。攻めて。みんな(気持ちが)引いたプレーはしていない」と言う。ただ守備にミスが相次ぎ、勝機が逃げた。チーム失策49個はリーグワーストだ。堅守なくして、上位で戦えない。2連勝で止まり、今季最多の貯金7はならず。健闘しても、またも課題が浮き彫りになった。【酒井俊作】