阪神近本光司外野手(24)がリーグ戦再開に向けて、意欲の居残り特打を行った。雨天のため、甲子園の室内練習場で行われた全体練習終わりに約20分、黙々とバットを振った。ここまで併殺打0のドラフト1位は、鉄人金本知憲前監督流の全力疾走を貫くと宣言。矢野監督も若きリードオフマンの打順について1番固定を明言した。

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練習終わりの静かな室内に、打球音が響いた。直球マシンを相手に約20分、黙々とバットを振る近本の姿があった。

「足りないところというか、ほとんど足りない。時間があるうちはやらないといけないなと思うので。こういう試合がない期間で、レベルアップです」

交流戦は22打席連続無安打など打率1割6分5厘と低迷。3割台をキープしていた打率は2割6分8厘にまで落ち込んだ。それでも、ドラ1ルーキーに焦りは感じられない。

「自分の打てるところ、打てないところを分かりつつ、しっかり自分のできることを。できないところを伸ばすよりも、しっかりできるところ、生きた球を仕留めることができるように心がけて」

そう語る近本には1つの注目点がある。今季ここまで72試合出場。リーグ4位の322打席に立ち、併殺打は「0」。リーグで300打席を越える打者は現在12人いるが、併殺打0は近本のみだ。

「金本さんも結構、ゲッツーがなかった選手というのを昔聞いた覚えがある。金本さんも全力疾走を続けていたので、若い時から僕も続けられるようにやっていきたい」

1492試合連続フルイニング出場など数々の記録を打ち立てた金本前監督は「1002打席連続無併殺打」というプロ野球記録も作った。全力疾走という金本スタイル継承を、若き切り込み役は言葉にした。

矢野監督は交流戦で苦しんだリードオフマンの打順について「変えへんよ。だって1年目。波があって当たり前やし、疲れもある。研究されることもある。そこをどう乗り越えていくか、というためにね」と1番固定を明言。指揮官は再び快音を連発してくれると信じている。大きな期待も背負い、近本の戦いがまた始まる。【奥田隼人】

▼連続打席無併殺打記録の上位には、5位の松本が両打ち以外は全員左打者だ。また、5人とも通算盗塁数が100を超える。82、83年に2年連続盗塁王を獲得した松本は通算342盗塁を記録しているし、通算167盗塁の金本も、無併殺打記録中の00年は30盗塁、01年は19盗塁をマークしている。「左打者で俊足」であることが、併殺打を防ぐためにはやはり有利なようだ。その条件に当てはまる近本には、記録をどこまで伸ばせるか期待がかかる。