原巨人が、今季2度目のサヨナラ勝ちで、3連覇中の2位広島に5ゲーム差をつけて独走態勢に入った。3度リードを許したがすべて直後に逆転。同点の9回は若林の二盗から相手失策を誘い、サヨナラ劇につなげた。原辰徳監督(60)は、先発桜井を3回であきらめて積極的な継投を展開。7回には代打阿部が同点適時打を放つなど、打ち手が決まった。リーグ戦再開から4連勝を飾り、貯金を今季最多の12に伸ばした。

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ベンチで腕を組みながら、原監督が体を左右に揺らした。脳内を駆けめぐらせた“策”をグラウンドで展開させた。同点の9回、先頭の若林が四球を選んで出塁。増田大の初球で犠打の構えだけでバットをスッと引かせた。「いけたらいけのサインだった。攻めなきゃ点が入らないので思い切っていきました」。その間に若林が二盗を決め、戦局が優勢に傾く。無死二塁から増田大の三塁線への犠打が相手の失策を誘い、若林が一気に生還。サヨナラ勝ちを呼び込んだ。

序盤からちゅうちょなく積極策を貫いた。先発桜井が、立ち上がりの3回までに6安打、3失点とつまずくと、3回1死満塁の好機で代打中島を送り、4回から継投策に入った。先発転向後のここ3試合で2勝(0敗)、防御率1・83の右腕だったが、試合の痛手になる前にスパッと降板させた。2番手以降は鍬原、沢村、大竹、田口、中川とつなぎ、クロスゲームのまま勝機へとつなげた。

投手、野手含め、総勢21人の用兵を巧みに、自在に、操った。一塁で先発した大城を一時逆転した8回は捕手に動かし、9回は中川-小林のバッテリーを投入、再び一塁に戻した。「一塁→捕手→一塁」の守備変更の大胆策も、今や驚きはない。いなかる状況でも勝機を見据え「最善策の中で-」にブレはない。

劇的勝利に、指揮官は興奮を隠さなかった。「かなり物語は長かった。今日は1発、横っ面をひっぱたかれないと点が入らないような、なかなか先行ができなかった。しかし攻撃性というものは、良かったと思います」と顔を紅潮させながら振り返った。勝負強さが際立ち、2位広島とのゲーム差を5に広げた。第3次原政権が、いよいよ独走態勢に入りつつある。【為田聡史】

▽巨人増田大(9回無死二塁から3バントで犠打)「2ストライクからでも決める自信はありました。どんな場面で出されてもバントできるよう練習している」

▽巨人若林(9回に二盗を決め)「『いけたらいけ』のサインだった。攻めなきゃ点が入らないので思い切っていきました」