「セ界の大砲」がレジェンドに王手をかけた。4番に入ったDeNA筒香嘉智外野手(27)が、オールスター4年連続弾をマークした。2回に西武高橋光から左中間最深部へ運び、自身球宴通算5号。81~85年の山本浩二、97~01年の松井秀喜の5年連続弾の最多記録を射程に捉えた。球宴出場5年連続5度目の常連が、時代をまたいで豪快な1発を披露した。

    ◇    ◇    ◇

4番打者の血がうずいた。筒香が甲子園の雨を切り裂いた。2回1死一、三塁。西武高橋光のど真ん中直球を一振りで捉えた。右足を少しだけ上げてタイミングをとると、バットの軌道にボールを乗せた。バックスピンを利かせた一撃に「感触はすごく良かった。ホームランを打ちたいと思っていたので、1本打てて良かったです」。お手本通りの1発を4年連続でスタンドに放り込んだ。

聖地・甲子園から野球の魅力を日本中にアピールした。「初めての甲子園でのオールスターは、また違った雰囲気で、楽しみながらいい経験をさせてもらった」と地元関西での夢舞台を満喫。双子の姉もスタンドから観戦した。「珍しいですよ。あんまり試合を見に来たいとか言わないので。野球に興味がないんですかね?」と苦笑いを浮かべるも、野球人気&野球人口拡大の指標にもなる。ルールを完全に理解しているかも微妙な姉の目の前で、一番分かりやすい本塁打で醍醐味(だいごみ)を示した。

球界を代表する選手が集結する舞台での存在感は、年々増している。当たり前のように4番に座り、当たり前のように本塁打を打つ。試合前のホームラン競争は準決勝で敗退し“2連覇”は逃したが、打球の迫力はスラッガーそのもの。「どんな試合でも意味がある。やるからにはいいプレーをしたいし、昨日よりも野球が上手になりたい。それはどんな時でも同じだと思います」と思考の軸にブレはない。

試合後、雨脚は強まる中での表彰式に登壇。敢闘選手賞(賞金100万円)に選ばれた。少し高いところからスタンドへと目をやった。「こんな雨の中、最後まで試合を見てくれている。当たり前だと思ってはいけない。感謝しないといけないし、ファンの方が喜ぶようないいプレーがしたい」。甲子園の空高く、会心の一打をかっ飛ばした。【為田聡史】