楽天のドラフト4位ルーキー弓削隼人投手(25)が、山賊打線を手玉に取った。7回4安打無失点でプロ初勝利初完封から2連勝。10連戦初戦の鮮烈シャットアウトに続く快投を演じた。

平石監督が「踏ん張りどころ」と位置付けた重要な一戦で大型左腕が期待に応え、チームも3位に浮上した。

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ローテ投手として、認められた証しにほかならない。7回87球。2試合連続完封へ期待が膨らんだ弓削は8回のマウンドにいなかった。平石監督は「プロで1年間投げたことのある投手なら別だけど(新人で)次もある。スパッと代えました」。本人も続投への色気をのぞかせつつ「ケアして備えます」と自覚を示した。

直球が通用せず、苦しんだ社会人1年目。所属上長が、勤務に支障が出ない範囲で野球と向き合う時間をつくってくれた。「その時からですね。『考えること』を大事にするようになったのは」。プロ初登板は初勝利まであとアウト2つで降板した。「1度、自分のやり方でやらせて下さい」。プロの壁を乗り越えるため、2軍でトレーニングコーチにお願いして社会人時代の練習に回帰した。最高気温36度と蒸し暑いメットライフドーム対策に猛暑日の仙台でフリースを着込んで練習。「去年まで、群馬で40度くらいの中を練習してましたから」と笑わせた。この日も、得意のスライダーとカットボールを生かすカーブを絶妙に配した。

秋山、森、山川…球界を代表する打者を翻弄(ほんろう)した中、ひときわ意識していたのは西武先発の今井。弓削が佐野日大高1年時にチームが甲子園出場後、作新学院の9連覇が始まった。年下とはいえ、甲子園優勝投手の今井に対し、3年春からエースになった自身は栃木大会8強が最高成績。「向こうはスーパースター。僕はペーペーですから。相手投手が誰であってもですが、先に降りたくないとは思っていました」。10連戦2度目の快投の裏には、ひそかな雑草魂があった。【亀山泰宏】