ヤクルト館山昌平投手(38)の引退が球団から発表された。3度のトミージョン手術を含む9度の手術を受け、投げ続けてきた。体には175針が刻まれている。「名球会の入り方を間違えてしまいました」。200針まであと25針。苦闘の痕跡すら、笑いに変える度量が強さの源だった。

09年に16勝を挙げ、最多勝に輝いたが、成績以上に特殊な領域で生きた選手だった。筋力トレーニングで使うダンベルの重さは1つ46キロ。来日したてのバレンティンからは格闘家と間違えられて恐れられた。コンディショニングやリハビリについての知識も深く、球団トレーナーも知らないような最新の理論まで熟知していた。右肘に衝撃が伝わるのが良くないと思えば、左打ちへの転向を模索する柔軟性もあった。

けがの功名という言葉があるが、けががあったからこそ考え、工夫したのかもしれない。ことごとく手術を乗り越えて復活する姿は見事だったし、心を揺さぶられた。館山よ。その名球会は目指さなくてもいい。不屈の姿勢は、ファンの胸の中にいつまでも残る。【03~04年ヤクルト担当=竹内智信】