6大学の秋のリーグ戦は14日に開幕する。春は5季ぶりに明大が優勝し、4勝を挙げた森下暢仁(まさと)投手(4年=大分商)が結果を残した。年明けから、回転数をひとつの目安に、球質の改善に取り組んできた。大学球界を代表するエースに成長した右腕のストレートは、どんな変化を遂げてきたのか。森下の言葉をもとに成長の過程を追った。

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最終学年を迎え、掲げたのは「ボールの質の改善」だった。神宮球場の球速表示で154キロを記録したが、勝負どころでストレートを打たれた。「得点圏に走者を置いてのポテンヒットは何度かありました」。

参考にしたのが回転数。リリースポイントでいかに指先でボールを押し込めるか。人さし指と中指に神経をそそぐ。春先から夏場にかけて計測した。

1月31日 2240

3月27日 2286

4月18日 2248

5月23日 2318

7月6日 2186

春季リーグ開幕前後は2200回転を超えるほど。優勝争い佳境の5月下旬、2300回転を超える。「腕が振れるようになりました。軽く振っても指にボールがかかって、ボールが行くようになりました」。目安としてプロ1軍主力投手はおよそ2400回転。

リリースした瞬間、ボールに力が伝わる感触と、回転数との関係に触れた。

森下 力を入れて投げた時に回転数が上がることもありますが、軽く投げてもボールに指がかかった時は、スピード以上に回転数が出るイメージがあります。

リーグを戦う中、試合を左右する重要局面での勝負球とその球質について得た原則がある。

森下 ピンチでインコースにコントロールして投げる時が、指のかかりが良くなります。スピードは出てませんが、ボール自体は伸びている感じです。

5月18日。勝ち点3同士での慶大・第1戦。初回2死二塁、打者郡司。2-2から、5球目145キロのインコースへのストレートで空振り三振。「この試合の持つ意味、初回という状況からして、ここは打たれてはいけない場面でした。そこで内角へ力のある、指でボールを押し込めたストレートを投げられて、非常に大きな1球でした」。

回転数を意識しながら、腕を振り、リリース時の指のかかりに気を配ってきた。その作業はボールの質を深く考える転機になる。リーグ戦を終えた6月中旬、その言葉は具体的だった。

森下 投げた瞬間、リリースした時に、ボールの軌道がイメージしたところに入った時、ボールに力が伝わったという感触があります。そういう時はストレートの強さが出ている時です。打ってもファウルか、フライ。前に飛ばないイメージです。

投手森下にとっての質のいいボールを投げるメカニズムは、身についた感がある。あとは、試合当日にいかに合わせるか、関心事は先に進んでいる。

森下 調子がいい時はキャッチボールから、ボールを離すタイミングでボールが行っている(走っている)な、と感じます。悪いな、と感じる時は、捕手に聞いてもボールは来ていないと言われます。そういう時はランニングやストレッチを増やして体のだるさを取り除くようにしています。

9月上旬、言葉からは確信に近いものが漂う。

森下 球質は上がったという実感はあります。ピンチの場面でも、空振りか、打たれてもファウルということが多くなりました。

球質改善に取り組む過程で、回転数を入り口にして、複数のチェックポイントが森下には見えていた。そのポイントが連動することで、打ち取れる1球の根拠が明確になる。ここからさらに先へ進めるか。秋季リーグの森下のボールに、その答えはある。【井上真】