笑顔の足もとは震えていた。西武森友哉捕手は、パ・リーグ最優秀選手に選ばれ、壇上でガチガチに。「足ガクガク、手震えて記憶が飛んだ」と冷や汗をかいた。それでも緊張から解き放たれると「取れるんちゃうかなと思ってました」。チームメートから言われていた予想が的中し、ちゃめっ気たっぷりに喜びを口にした。捕手での選出はプロ野球史上8人目。パでは61、63、65、66、73年の南海野村克也、03年のダイエー城島健司以来、16年ぶり3人目の快挙となった。

扇の要として初めて戦い抜いた。炭谷が巨人へFA移籍。「自分がやらなアカン」と腹をくくった。先発マスク126試合。山賊打線の主軸も担い、打率3割2分9厘で首位打者獲得と100打点超えが受賞を大きく後押しした。「フォームは変えずに、タイミングの取り方だったり、打球方向を意識して考えながらやったことが、うまくはまった」と振り返った。

信条を貫いた。「1度もバットを変えなかった。どんなに(調子が)悪くても使い続けるようにした」。開幕前、プロ1年目の形状に原点回帰。ゼット社の長さ33・5インチ(約85センチ)、重さ880グラム。材質は硬めのメープルで挑んだ。調子の浮き沈みにもじたばたしない。打てない時期も「どうせ打てへんなら、そのままでいい」と割り切って使い続けた相棒で、数字を最後まで残し続けた。

忘れ物がある。リーグ2連覇も日本シリーズの舞台には立てていない。「防御率も悪い。盗塁阻止率も悪い。すべてにおいて技術アップしないと。日本一を目指してやっていきたい」と誓った。【栗田成芳】