今年の巨人は、勝つべくして勝つ。巨人原辰徳監督(61)が7日、客員教授を務める千葉・勝浦市の国際武道大で16年連続16回目の講義を行った。

監督復帰1年目で5年ぶりのリーグ制覇を果たした昨季は、無欲の勝利と表現。チャンピオンチームとして挑む今季は、新リーダーの台頭を求め、レギュラー固定を理想に掲げる。より一層の厳しさも取り入れ、6年ぶりの連覇を取りにいく。

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約280人の学生を前に穏やかムードで進んだ講義の中で、原監督が今季に懸けるキーワードを口にした。「チームが勝ち続けるためには」の問いに、一呼吸置いてマイクを握った。

「上級な勝利者というのは、勝つべくして勝つ。これが最も上級な勝利者」。そう言って続けた。「昨年のジャイアンツは、勝つべくして勝ったわけではない。どちらかというと無欲の勝利で、1年目は勝つことができた。今年ジャイアンツにとって重要なのは、勝つべくして勝つこと」。

当然優勝候補に挙がり、追われる存在になる。「チャンピオンチームはそういうもの」と重圧をはねのける強さを求める。前年と同じでは、後退につながると危惧。「(意識が)芽生えないやつは『喝』だな。去年と同じことをしていたら我々は勝てない。足をすくわれる。その上をいく個、チームになる」と言った。

変化を求めるポイントは、言葉の端々ににじむ。

(1)新リーダー台頭 強い組織とは、監督意識を持つ選手をいかに多くつくれるかが持論。「もう2~3人つくりたい。リーダーは多ければ多いほど戦力。今年中に確立したい」。坂本、丸、菅野らに続く存在。4番岡本は筆頭候補に挙がる。指揮官は「賢い選手だから自覚は出てくれると期待してます。(阿部)慎之助がいなくなって大きなリーダーがいなくなったこともきっかけになる」。

(2)鬼の厳しさ 復帰1年目の昨季はハツラツ、ノビノビをテーマに掲げた。今季は明るさに加えて「やや厳しめの言葉も出るだろうなと思ってます」と予告。

(3)レギュラー固定 昨季は143試合で113通りの打線を組んだが、今季は固定を理想に掲げる。「それは理想型。ライバルが出てくれば、うまく用兵しないといけない」と競争も歓迎する。

新外国人3選手を補強し、戦う顔触れは出そろった。「開幕が早い。選手には早めに仕上げてくれと言ってるし、キャンプが楽しみです」。上級の勝利を求める、新たな1年を戦う覚悟を示した。【前田祐輔】

<原監督の国際武道大講義での主な名言>

◆05年 規律の重要性について「私が言う愛は理解すること。ジャイアンツというチームを理解することなんです。チームが勝つためには自己犠牲が必要になる。そういうことができない選手に対し、お前にはジャイアンツ愛が見えないぞ、と注意するんです」

◆09年 リーグ2連覇を果たして迎え「私の頭の中に3連覇という気持ちは一切ない。今年から5連覇する。そういう気持ちでスタートする」

◆15年 他動的という人生観を披露し「人生、自分で動かしているという考えでは上にいけない。環境を与えられ、生かされ、表現する場所ができている。いざとなったら勝負の鬼になって戦えばいい」

◆17年 第4回WBCで世界一奪回を目指す侍ジャパンに「勝負事は生きているから、決め込んではいけない。勝つために流動的に成長することは、決して恥ずかしいことではない」

◆19年 FAで丸、炭谷を獲得も、人的補償で長野、内海を失い「勝負の世界は足し算ばかりでない。人生歩んでいるとよく分かります。反対勢力、引き算はある」