03&05年の阪神V戦士で、日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(50)が3月20日の開幕相手、ヤクルトの沖縄・浦添キャンプに「潜入」した。高津臣吾監督(51)を直撃取材し、主砲バレンティンが抜けたことがむしろプラスで、青木、山田哲、村上らで目指す「つなぎの野球」が脅威と警戒。メジャー1367安打の新外国人遊撃手、アルシデス・エスコバー内野手(33=ホワイトソックス3A)の加入も総合力をアップさせるのでは、と分析した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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ヤクルトの浦添キャンプは活気がありました。メイングラウンドでは全体的に声が出ていたし、各選手がよく動いていました。

高津監督は亜大出身で、1つ年下のぼくが東洋大出身。同じ東都リーグで戦った間柄で、プロ入り後の対決でも闘争心を燃やしたものです。いきなり「阪神はどうなの?」と逆取材を受けました。

まずは「バレンティンの穴は埋まるのか?」という視点でチェックです。みなさん、得点力が低下すると思うでしょう。でもぼくは逆にプラスに働くのではと読みました。

昨季の阪神はバレンティンにシーズン6本塁打を献上しました。ただ大砲が抜けても青木、山田哲、雄平、坂口ら好打者がそろっています。高津監督は「つなぎの野球」をするはずで、このメンバーが機能すれば虎投はてこずるでしょうね。

昨季の新人王で自信をつけた村上もさらに大きく見えました。こちらも阪神戦で6本塁打。重心が後ろに残り過ぎ、高めに苦慮していたのが解消しつつあります。持ち前の長打力に、確実性が加わった「4番」に成長するとやっかいです。

カギを握るのは新外国人で遊撃のエスコバーでしょう。長距離タイプではないけどメジャー通算1367安打の好打者で、15年にゴールドグラブ賞も獲得した名手。山田哲との二遊間が固まり、実力通りに働けば本当に手ごわいです。

昨季はバレンティンの左翼に打球が飛べば二塁打の感がありました。でも今シーズンは青木がレフトに回るようで、失点も少なくなるとみていいでしょう。

阪神、ヤクルトとも新外国人がポイントですが、ヤクルトは村上の成長が著しく、バレンティン流出が大きなマイナス材料になっているようには思えません。正直、若き主砲の存在はうらやましいですね。

ブルペンにも足を運びましたが、こちらは質量ともに阪神が上です。ヤクルトは、クック、イノーアら新外国人投手が先発ローテーション入りしないと厳しいでしょう。

高津監督は外国人がダメなら、すぐ若手に切り替えるといった思い切った起用をしそうです。また、捕手に嶋が新加入し、中村の刺激にもなって、投手陣にも好影響を及ぼすかも。

高津監督は「うちは最下位だったから、もう下はない。チャレンジしていくよ」と話してくれました。阪神は開幕から“捨て身”でぶつかってくるライバルにどう対応するのか。侮れません。

○…ヤクルト007はボーア、サンズをはじめ、新外国人選手への警戒も強めている。宜野座の阪神キャンプをチェックしているヤクルト山口スコアラーはボーアについて「タイミングの取り方がうまい。力感もそんなに感じず、トップでも間がある」という。3月20日からのシーズン開幕カードは神宮が舞台で「怖いよね。最初が大事。(勢いに)乗られたらイヤ」とアタマを悩ませる。サンズも「右にも打てる」と要注意マーク。今後は投手陣を含めた8人の外国人勢の実戦を注視し、弱点を探る。