不死鳥が、新天地でよみがえった。ロッテ鳥谷敬内野手(38=阪神)が17日、2軍練習試合・巨人戦で入団後初めて実戦出場した。井口資仁監督(45)の希望で「3番遊撃」でスタメン出場し3打数1安打。5回でベンチへ下がった。移籍からまだ1週間。それまで約5カ月間は自主練習のみだったが、走攻守にブランクを感じさせなかった。何よりも、前へ進もうとする姿は、野球ができる喜びに満ちあふれて見えた。

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鳥谷が躍動した。5カ月ぶりの実戦、38歳のベテラン…そんな保険をかけた枕詞(まくらことば)は必要ない。若手が奮闘する2軍でも、ひときわ目立つアグレッシブさ。「グラウンドに立っていることの喜びを感じながら試合をしてました」。約1時間半、土の香りを楽しんだ。

象徴的なシーンが、3回の初安打の時に生まれた。巨人戸郷の148キロ速球をレフト線へ流し、一塁を蹴った。その直前に左翼手がゴロを捕球したことを、鳥谷も知っていた。「タイミング的に難しいのは分かっていました」。それでも止まらず、二塁でタッチアウトになった。

狙いがあった。「自分の感覚と、実際に(外野手から)ボールが来たときの時間差や、スライディングした感覚とか、それをこなさないと」。今年はキャンプも経験できず、実戦感覚が球界の他のどの選手より遅れている現実はある。「無難に止まるよりは、どんどん行ってみて、積極的に行きすぎな方でやっていきたい」とも添えた。

その姿勢は、かつて二遊間を組んだ今岡2軍監督にとってもうれしいことだ。「阪神時代に背負っていた大きなものを1回外して、純粋に野球少年みたいに戻ってもらいたい」と願っている。ベテランの目の輝きは、必ず若手が見ている。入団1週間にして「間違いなく化学反応が起きています」と、早くも球団の期待通りになっている。

1人になった時間で、ますます大きくなった。「野球をできるありがたさは、そのままタイガースでやっていたら感じられなかったと思う」と、原点から見つめ直してきた。ベンチから遊撃のポジションへのダッシュは他の誰よりも速く、一目散に7秒弱。少年のように夢中で白球を追う先に、カクテルライトの舞台が待っている。【金子真仁】

▽巨人阿部2軍監督(1安打と好守の鳥谷に)「何カ月もやってないのに、大したもんだよ」

▽巨人炭谷(戸郷とバッテリーを組み、鳥谷と3度対戦)「去年までと印象は変わらなかった。選球眼もいいですし、狙い球とかバットコントロールはすごかった」