“DeNAファン心のふるさと”として名高いテレビ神奈川が「おうち時間に盛り上がろう! プレイバック熱烈LIVE」と題して、ベイスターズの名勝負をピックアップ放送している。

開幕を待ちこがれるハマっ子は当然、チェックを欠かさない。放送直後はツイッターのトレンドランキングで上位に食い込むこともある。

27日午後7時からの放送は、いきなり5番に抜てきされたドラフト2位の伊藤裕が、プロ1号を含む2発を放った昨年8月10日の中日戦。「サード筒香」に続く連夜のサプライズで、真夏のハマスタが沸騰しました。日刊スポーツ復刻版でも余韻をもう1度!

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<DeNA5-4中日>◇2019年(令元)8月10日◇横浜

またも勝負手が的中-。DeNAアレックス・ラミレス監督(44)が、連日の大胆オーダーを組んだ。9日にプロ初安打を放ったばかりのドラフト2位、伊藤裕季也内野手(22)を「5番二塁」でスタメン起用。同じく9日に三塁で起用した筒香に続く、驚きの用兵で中日戦に臨んだ。伊藤裕は6回、相手先発の小笠原からプロ1号ソロ。8回にはロドリゲスから同点2ラン。2打席連発で期待に応えサヨナラ勝ちを呼び込んだ。ベイスターズに最高の追い風が吹いている

 

「伊藤裕季也です。好きな4文字熟語は『焼肉定食』です」。自己紹介を求められた伊藤裕は、初のお立ち台で爆笑をさらった。

前夜にプロ初安打を放ったばかりの新人。好物の肉で蓄えたパワーをこれでもかと見せつけた。2点を追う6回。中日小笠原の142キロを左翼スタンド最前列に放り込むプロ1号。2点を追う8回には、人生初の2打席連発となる2号2ラン。中日ロドリゲスの151キロを雄大なフォロースルーでぶった切り、またもや左翼席へ放り込んだ。

22歳。初スタメン、しかも「5番」でも野武士のごとく、威風堂々と振る舞った。使用するオレンジのバットは「大学の時に後輩から『どうですか?』と言われて。あ~そうかと。色は特にこだわりはないです」と言い、前夜から「少し軽いものに変えた」とは言うが「グラムは分からないです。メーカーさんにお願いしたものを使っているので」。無心で太刀を抜けたのには理由があった。

3月7日。中日とのオープン戦(ナゴヤ球場)は絶対に忘れない。2回の打席で一塁後方へ飛球を放ったが、ファウルと自己判断し走りださなかった。風で押し戻された打球はフェアゾーンへ。すぐさまダッシュしたがアウトになり、直後にラミレス監督から懲罰交代を食らった。

同日、ツイッターを更新した。「全ての方に失礼なプレーをしてしまいました」という長文の謝罪文を載せた。「野球をやめるまで絶対に忘れてはいけない」とツイートを固定。時に見返し「当たり前だけど、フライを走る。守備のカバリングとか。スキを見せない。今までは気の抜けたところがあった」と改心した。

こんな日のために刃を研ぎ続けた。5月24日のイースタン・リーグのロッテ戦。5打数無安打に終わり、守備でも納得のいく形を見せられなかった。試合後、嶋村2軍打撃コーチと話し合い「野球をやめるまで、何か続けられることをしよう」と決めた。毎日100回以上の“歩き素振り”を日課とし、今も続ける。

首位争いまっただ中、戦の場にふさわしい鋼の覚悟を秘めていた。筒香に続いて2度もその覚悟を披露し、真夏のハマスタを酔わせた。【栗田尚樹】

 

◆伊藤裕季也(いとう・ゆきや)1996年(平8)8月30日、三重県生まれ。日大三では2年秋からベンチ入りし、3年夏は4強。立正大4年の昨年は大学日本代表入り。秋の明治神宮大会決勝(対環太平洋大)で8回に逆転2ランを放ち、チームを9年ぶり日本一に導いた。18年ドラフト2位でDeNA入団。8日の広島戦で1軍デビューし、3試合で8打数4安打。182センチ、96キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1200万円。