背水のマウンドで勝ちきった。楽天塩見貴洋投手(31)が9日、ソフトバンク3回戦(ペイペイドーム)で7回7奪三振1失点と好投し、今季初勝利をマークした。自主トレをともにする足立祐一捕手(30)との息の合ったピッチングで緩急を使い、4安打に抑えた。自身開幕2連敗スタートも、覚悟を決め、懸命に左腕を振った。

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表情は変えなかった。8点リードの7回2死三塁。塩見はソフトバンク代打九鬼をフォークで空振り三振に仕留めると、淡々とベンチへ歩いた。「やっと勝てた、というのもありますが、まだ負けが先行している。そこまでは喜べない」。今季初勝利に湧いた感情は安堵(あんど)だけではなかった。

表に出さずとも、胸の内には並々ならぬ思いがある。4年ぶりに開幕ローテ入りしたが、開幕2連敗。ともに5回2死でマウンドを譲っていた。「1試合1試合が勝負だけど、3回目も使ってくれた。やることは変わらずやってきたつもり。結果を出すだけ。ダメだったら2軍です」。納得のいくフォームを模索し、前々日、前日と2日連続でブルペン入り。試行錯誤も実った。

女房役のリードにも引っ張られた。ここ2戦の太田に代わり、自主トレをともにする足立と今季初バッテリー。前回登板では11・9%(101球中12球)のカーブを、この日は20・6%(107球中22球)と増やした。3回、柳田へは4球カーブを続けて一ゴロ。前日2発の強打者へ3打席で9球中7球を投じたように、左打者には15球を割り振り、つながりを切った。「足立がリードしてくれて本当に助かった。あいつのミットを目がけて投げるだけ。任せっきりです」と信頼を元に、懸命に腕を振った。

三木監督も「前回、前々回は塩見の良さが出なかった。今回は緩急を使いながら塩見らしいピッチングだった」と改めて評価した。「2試合全然ダメだったので、開き直って腕振っていこうと思った。試合で出せたことは大きい。次回の登板が大事」と塩見。立ち止まってはいられない。【桑原幹久】

楽天足立(今季初スタメンで塩見を好リードし)「自主トレも一緒にやってきたので、塩見さんに1勝がついたことが何よりもうれしかったです」