西武内海哲也投手(38)が、移籍後初白星を手にした。今季2度目の先発登板で、5回2安打無失点で好投。ベテラン左腕は最後に両足太もも裏をつりながら、6回に味方の援護を受け、勝利投手の権利を得て交代した。炭谷のFA移籍に伴う人的補償で、15年過ごした巨人から移籍して2年目。巨人時代の18年8月21日DeNA戦以来743日ぶりとなる白星で、チームに4連勝をもたらした。

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快投とは裏腹に38歳左腕の両足は、限界を超えていた。内海が、この試合初安打を許した5回2死。内野安打と右前安打の連打で、一塁カバーに入った際に2度、両太もも裏に異変を感じ取った。一、三塁で9番の快足・和田。内角高めのツーシームで三邪飛に打ち取り、743日ぶりに手にしたウイニングボール。「ただただうれしかった。家族はもちろんですが、リハビリから僕にかかわってくれたトレーナー陣とかいろんな人に感謝したい。感無量です」。格別だった。

移籍後、2度目の挑戦に、スタンドでは家族が総出で見守った。前回登板8月22日オリックス戦(京セラドーム大阪)では2発に泣き、6回3安打4失点で移籍後初勝利を逃した。土曜日の試合。少年野球の試合があった子どもたちは観戦できなかった。「1人では不安で、あそこのマウンド。支えてくれる人もいれば家族もいる、後ろについているよという気持ちになる」。1度登録抹消されるも最短10日で回ってきたチャンスに、しっかりと応えた。

プロ17年目の38歳。1軍登板0で終わった昨年10月、「引退」の2文字が頭をよぎった。球団から都内のホテルに呼ばれた。スーツを着ながら「もしかしたら…」とネクタイを締め、部屋をノック。すると渡辺GMから「来年こそよろしく頼む」。心配は杞憂(きゆう)に終わった。それよりもチームに必要とされたことがうれしかった。「ライオンズで活躍することで恩返しする」。不退転の覚悟を決めた。直後に「左前腕・筋腱修復術」の手術。すべては1軍で投げるためだった。西武で27番のユニホームを身にまとい、勝利を挙げるためだった。

巨人から西武、セからパへ。新天地は、すでに“ホーム”となっていた。試合前。練習を終えると仲間たちから拍手で送り出された。試合後はお立ち台で、ファンから743日ぶりの白星に祝福の拍手に包まれながら言った。「ようやくライオンズの一員になれたと思います」。最後は目に涙をためて、にじむスタンドを見た。上ずる声を抑え、勝利の喜びをかみしめた。【栗田成芳】

▽西武辻監督(内海の移籍後初勝利で、チームは4連勝)「昨年1年どこじゃないよ、彼(内海)にしてみればね。それだけ実績のある投手が移籍して、故障もありながら復活して、まあ、ベンチも勝たせてあげたいというところでね。いい1勝になったと思います」