巨人が来季のDH制暫定導入を提案したことを14日、発表した。山口寿一オーナー名の文書でこの日のセ・リーグ理事会に提出された。新型コロナウイルスの影響が残る中、投手の負担軽減やチーム強化、プロならではの試合の提供を理由に挙げた。だがセの他球団からは従来通り、慎重論が根強く、来季導入は見送られることが決定的になった。

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巨人の本気度の表れだった。この日午前のセ・リーグ理事会で、来季のDH制暫定導入検討を要望する書面を提出した。文書の名義は山口オーナーで、球団トップ名による提案書は異例のこと。提案した文書を公表するなら議論に応じないと強硬な姿勢を示した球団もあった模様だが、この日夕方に発表に踏み切った。球団関係者は「それだけの決意で申し上げたということ。日本シリーズの結果を受けてもあるが、それとは別に、来年は五輪もあって日程が相当厳しくなる。その中で何とかしなければいけないというのでお願いした」と説明した。

巨人が導入検討を要望した理由に挙げたのは、以下の3点。

<1>コロナ禍の投手の負担軽減 巨人はセ・リーグで故障した投手が41人で、パ・リーグの30人を上回ったことを挙げ、過密日程と投手が打席に立つことによる打撃と走塁機会の負担が関係したのではと指摘した。

<2>コロナ禍におけるチーム強化の促進 投手の負担軽減を図りながらチーム力を上げるには、1人でも多くの野手に出場機会を与えて鍛えるのが効果的との見解。

<3>プロならではの試合を提供 点差や試合展開で投手がバットを振らない場面を挙げ、プロスポーツの本来の理念に反するとの考えを示した。

加えて、新型コロナ感染者が再び増加傾向にある現状も、検討を要望した下地にあった。球団関係者は「まず来季、セ・リーグとして乗り切るためにということ」と訴えた。

それでも他球団は慎重な態度を崩さなかった。理事会ではDH制導入と投手の負担軽減の因果関係などに懐疑的な声が上がるなど、現時点で来季の暫定的導入は見送られる方向になった。ただ、巨人がオーナー名で正式に書面で提案したことで、未来の野球界に一石は投じた。【浜本卓也】

◆指名打者 守備につかず、攻撃では投手に代わって打席に立つ打撃専門の選手。DH(Designated Hitter)と略される。日本のプロ野球では、パ・リーグが75年から採用している。