25日に交流戦が開幕する。コロナ禍の影響で昨季は中止されたため、開催は2年ぶりになる。セ・リーグ首位の阪神は、ロッテと対戦。阪神ファンにとってロッテ戦の苦い思い出といえば、大敗で4戦全敗した05年の日本シリーズだろう。

4試合の中でもひときわ印象深いのが第1戦、7回途中で打ち切られた日本シリーズ史上初の「濃霧コールド」だ。阪神打線が先発清水直行に沈黙し、頼みの井川慶が打ち込まれて6回5失点と一方的な展開になった。霧は試合中盤あたりから右翼席付近で発生。最初は岡田彰布監督が「甲子園の焼き鳥の煙かと思った」程度だったが、試合が進むにつれて濃さが増した。右翼席が完全に包まれ、ついには右翼から中堅の定位置付近も覆われていった。

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舞台の千葉マリンスタジアムは右翼から中堅方向が東京湾の間近に面し、霧は海から流れ込んできた。銚子地方気象台によると、日中の雨で湿度が高くなったところに、北と南からの風がぶつかり合って霧が発生。ただ風自体は弱く、濃霧となって停滞したという。

7回1死からベニー・アグバヤニが左中間へ10点目の2ラン。中村稔球審は「打球が見えない」とこのプレー後に中断を決断した。右翼手の桧山進次郎は「打球が全く見えなかった」とコメント。審判団は気象情報を確認したが「2時間後もこの状態が続く」と報告を受け、34分間の中断を経てコールドが宣告された。

岡田監督は「しょうがないやろ」と言いつつ「終わり方がすっきりせんよな」ともどかしげ。大敗とはいえ、2イニングを残しての敗戦に「野手は(日本シリーズに)慣らす意味で、もう1回打席に立たせたかった」とこぼした。勝ったロッテのボビー・バレンタイン監督も「大リーグで雪や雨は経験しているけど、霧は初めての経験」と話すなど異例の開幕戦になった。

岡田監督は「7試合しかないんや。切り替えていくしかない」と語気を強めたが、第2戦も初戦を引きずるような大敗を喫した。初回に今岡誠の悪送球で先制点を与えると、好機で藤本敦士がバント失敗、先発安藤優也は6回6失点KOなど散々。打線は渡辺俊介に4安打完封され、日本シリーズ初の2戦連続2桁失点で0―10。岡田監督は「またJFKを投入できなかった」の問いに「なるかいな ! こんな展開で」と声を荒らげ、「甲子園に戻ってからや」と力を込めた。

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移動日をはさんで本拠地に帰った第3戦。島野育夫総合コーチは「ロッテには勢いがある。このままなら恥かくぞ。甲子園でやらんと」と危機感いっぱいだったが、不安は現実になった。打線は先発小林宏之らの前にまたも沈黙。投手陣も下柳剛が5回3失点で降板すると、2点ビハインドの6回から初登板した藤川球児も1イニング4失点。3番手の桟原将司は、福浦和也に10点目の満塁弾を浴びた。日本シリーズ初の3試合連続2桁失点で1―10。一気に王手をかけられた。

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岡田監督は「もう見ての通りや。ここという場面もないしな。明日で最後になるか、また野球ができるのか」と笑みすら浮かべて言った。3試合を戦い、先発は井川、安藤、下柳がロッテ打線の餌食に。打線も1番赤星憲広と5番今岡が1安打ずつで、4番金本知憲は10打席無安打の貧打。やはり、勢いが違い過ぎた。ロッテはリーグ2位からパ・リーグのプレーオフを制し、中4日で日本シリーズに参戦。一方の阪神は公式戦終了から中16日、リーグ優勝決定から中22日。鈍った実戦感覚の差が、大きく明暗を分ける形になった。

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そして第4戦も先発杉山直久がつかまり、4回までに3点ビハインド。6回に今岡と桧山の適時打で1点差に迫り、終盤はジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田智之のJFKを初投入したが、時既に遅しだった。岡田監督は「万全の状態でシリーズに入れなかった。(実戦のブランクで)打つ方が心配やったけど、その通りになってしまった。4試合とも1回も勝ち越せんかったし…。ロッテは勝ち上がってきた勢いがあった」と無念を隠さなかった。

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シーズンで計272打点を挙げた金本&今岡コンビは27打数3安打1打点。金本は涙を浮かべ「言い訳はない。力がないだけ」と言葉を絞り、今岡も「悔しいけど負けは負け」と胴上げを見つめた。全4試合で安打を放った矢野輝弘は、チーム唯一の表彰選手となる敢闘賞に選ばれたが「悔しい、悔しい」を連発した。

4連敗一夜明け、岡田監督の自宅には自ずと各社の虎番キャップが集まった。リビングはリーグ優勝を祝う胡蝶蘭や胴上げパネルなどであふれ、ミスマッチな囲みになった。本来なら第5戦に向けて練習に励んでいる時間帯。岡田監督も「あっという間やったな。ここまで打てんとは…」と、まだぼうぜん自失で沈黙が続いた。シリーズ前には村上ファンドによる阪神電鉄株の大量保有が判明しており、「タイガースはどうなるんや」と暗い話題がぶり返した。完全にきっかけをなくした記者の1人が脂汗を浮かべ、「トイレ貸して下さい」と言って初めて、場が和んだ。岡田監督にも少し笑顔が戻り「来年、日本一の忘れ物を取りに行くよ」と言葉を振り絞った。

4試合の得点は1、0、1、2で、合計4得点は日本シリーズワースト。33失点のチーム防御率8・63も、同ワーストだった。トータルスコアは4―33。17年の交流戦では、ロッテの挑発ポスターこう記された。「濃霧コールド33得点 忘れタイガー忘れられない 〝トラ〟ウマの四連敗」。

だが、阪神はそんなトラウマとは無縁のように、ロッテとの交流戦は29勝25敗5分けと勝ち越している。今回は移籍した鳥谷が2年ぶりに甲子園に帰ってくる注目の3連戦。どんなドラマが生まれるのだろうか。【松井清員】

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