同じ背番号27を背負う巨人炭谷銀仁朗捕手(33)と西武内海哲也投手(39)の運命が、「日本生命セ・パ交流戦」で再び交錯した。2回無死一塁、18年オフに西武から巨人にFA移籍した炭谷が1号2ラン。西武戦では4戦2発と“銀の恩返し”を決めた。炭谷の人的補償で巨人から西武に移籍した内海は、かつての本拠地から大きな拍手で迎えられたが2回3失点と、12球団勝利はならなかった。それぞれの古巣対決は土壇場の9回に西武が追いつき、引き分けに終わった。

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頭の中を複雑な感情が巡る。だが炭谷はいたって冷静だった。2回の第1打席の直前。次打者席で内海の投球に目を光らせた。「ツーシーム系が多かったので、狙っていこうかなと」。2回無死一塁、移籍後初対戦の初打席の初球。ベテラン捕手らしい読み通り、外角137キロツーシームを一撃で仕留めた。右翼フェンスを越える1号2ランを決め、「入るとは思わなかった。ライト前をイメージして、コンパクトに打ちにいきました。次につなぐ意識でしたが最高の結果になりました」と喜んだ。

言葉に出来ない複雑な感情を、音に乗せた。第1打席だけ、内海の登場曲である高梨康治の「PRIDE」で打席に向かった。「僕がFAで移籍して、人的(補償)という形で内海さんが西武に行って。いろんな思いがあった。(内海が)移籍後初の東京ドームということだったので、内海さんが使ってた登場曲を1打席だけ使わせてもらいました」。内海本人には知らせずサプライズで流し、思いの丈を表現した。

13年間過ごした古巣相手にも、結果で恩を返した。巨人に移籍後、出場147試合で8発目だったが、古巣からは4試合で2発目。試合前には中村、栗山、山川、森ら元チームメートとにこやかに言葉を交わした。「他のチームに(気持ちが)入らないわけではないですけど、(古巣対決は)やっぱり気持ちは入りますね」と、育ててくれた古巣への思いを力に変えた。

内海との移籍後初対戦、古巣との対戦。感傷的になってもおかしくない状況でも、冷静に、貪欲に、正々堂々と勝利を目指した。その姿こそが、炭谷流の恩返しだった。【小早川宗一郎】

▼西武辻監督(巨人炭谷の2ランに)「前回の交流戦でも、打たれた思い出があるぞ。何本打たれているんだ、銀仁朗に」