慶大(東京6大学)が34年ぶり4度目の優勝を果たした。15安打13得点で圧倒。今秋ドラフト候補の4番正木智也内野手(4年=慶応)が先制2ランを含む3安打3打点で、最高殊勲選手賞に輝いた。昨年はコロナ禍で大会中止。2年前の明大に続き、東京6大学が頂点に立った。福井工大(北陸)は初の決勝進出も、北陸大学野球連盟初の日本一はならなかった。

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日本一まで1球となっても、一塁を守る正木は表情を変えなかった。13-2の9回2死走者なし。福井工大の代打・茂森が空振り三振に倒れ、初めて口角を上げた。猛ダッシュでマウンドへ。NO・1ポーズで、仲間と喜びあった。

「勝ちきるまで、ホームランを打っても、あまり喜ばないと決めてました」と打ち明けた。勝負は最後まで分からない。苦い経験から得た教訓だ。昨秋の早慶2回戦。優勝まで1死としながら、土壇場で早大・蛭間に逆転2ランを打たれ敗れた。バックスクリーンへと消える打球を、当時右翼の守備位置から見送りながら「ホームランは1発で流れを変える」と痛感した。

最上級生で臨んだ今春。自己最多1季4本塁打で優勝に貢献した。今大会も準決勝・上武大戦で先制2ランを放ち、この日も初回に先制2ラン。「昨日は内角をホームラン。今日は外角攻めと思っていた」と、読み通り外寄り138キロをバックスクリーン右横へ放り込んだ。入学来テーマにしてきた逆方向への1発。今春リーグ戦ではなかった当たりを、大一番で放った。

生粋のバットマンだ。小2で野球を始め、今はない東京・平和島のバッティングセンターに通った。打撃教室で月間5、6本塁打を記録。7歳の少年が中学生や高校生を抑えトップに立ち、驚かせた。天性だけじゃない。オフはウエートトレに励み、スイングスピードを上げた。インサイドアウトの軌道も徹底した。そうしてつかんだ日本一の4番の座。ただ、こう言った。「通過点です。秋に向かって、もっとチームとして強くなれるように」。重責を担い続ける。【古川真弥】

◆正木智也(まさき・ともや)1999年(平11)11月5日生まれ。東京・大田区出身。池雪小2年の時、池雪ジュニアストロングで野球を始める。世田谷西シニア通算30本塁打。慶応高では1年秋ベンチ入り。2年春から4番で高校通算50本塁打。慶大では1年春からリーグ戦出場。今春まで通算61試合52安打10本塁打43打点、打率2割9分9厘。50メートル走6秒4。遠投110メートル。外野も守る。目標の選手は巨人坂本勇人。182センチ、87キロ。右投げ右打ち。

▽慶大・福井章吾主将(2安打に投手陣をリード)「たまたま僕がキャプテンという役回り。スタンドに座る選手を含め、部員一同でつかんだ優勝です。監督、チームメートに恵まれた結果。みんなに感謝したい」

▽慶大・増居翔太投手(先発で6回3安打2失点。大会2勝、防御率2・77で最優秀投手賞)「いろんな人のサポートで、ここまで来られました。結果として賞をいただきましたが、まだ成長できると思います」

▽慶大・渡部遼人外野手(16打数9安打、打率5割6分3厘で首位打者)「日本一という結果の中に首位打者を獲得でき、大きな自信になりました。サポートや打撃投手を務めてくれた仲間のおかげです」

 

■福井工大「次元の違いまざまざと…」■

福井工大は大敗した中堅後方バックスクリーンのスコアを、下野博樹監督(60)は携帯で写真に収めた。「慶応さんに次元の違いを、まざまざと見せつけられました。ここを目標に、選手を鍛えていかないと。戒めも含めて、もう1度という材料にしたくて記念に残しました」と明かした。投手陣が15安打13失点と打ち込まれ、打線は3安打のみ。「決勝まで来られた。大健闘」と選手をねぎらいつつ、リベンジを誓った。