阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が「父の日」に球団史上初のメモリアルアーチを放った。巨人戦の6回に左翼ポール際に、18号ソロ。球団新人が伝統の一戦で2戦連続本塁打を放ったのは初。父博信さん(54)に贈る技ありの1発だった。チームは巨人に連敗し、6ゲーム差に縮まったが、怪物スラッガーの勢いは止まらない。

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本塁打への確信はなかった。2点を追う6回。佐藤輝が近大の先輩右腕・畠の初球、外角低め152キロに素直にバットを出した。打球は逆方向に舞い上がる。「ちょっと打球が途中で失速していたので、どうかと思いましたけど」。左翼手亀井がフェンスにぶつかってグラブを伸ばした、すぐ上を越えた。打球速度170キロを超す弾丸ではなく、155キロながら強烈なスピンがかかって108メートルも飛んだ。伝統の一戦では球団新人初となる2戦連発だった。

父にささげるメモリアルアーチとなった。博信さんは86キロ級で講道館杯を優勝するなど柔道で名をはせた。佐藤輝の高校時代にはベンチプレスマシンを購入し、筋トレ部屋に「リフォーム」するなど、怪物スラッガーへと育て上げた。「一番応援してくれていて、一番身近で支えてくれているのが父だと思う。勝ちたかったですけど、個人的に1本打つことができてよかったですし、喜んでいると思います」。最愛の父への恩返しの1発となった。

18号で80年岡田彰布に並ぶ球団新人2位タイとなった。佐藤輝は「僕の中では監督をされていた時しか見たことがないですが、打者としてもすごい方だと思うので、並ぶことは非常にうれしい」とまた1人レジェンドに並んだことを素直に喜んだ。阪神新人1位の69年田淵幸一の22本にあと4本。新人左打者でも1位の46年大下弘(セネタース)の20本に2本差。まだ80試合を残し、40・85本ペース。このままなら、59年桑田武(大洋)86年清原和博(西武)の新人最多31本を抜く可能性も高い。

この日は右翼から左翼への浜風も強くはなかったが矢野監督は「輝の打球は逆方向へ右(打者)が打ったような打球を打てる。これからも逆方向へ打てる」と期待を膨らませた。この日も大谷が22号を放っており、今季7度目の“同日”本塁打となった。ベンチ前では恒例のZポーズ。試合がない21日は大好きなももいろクローバーZ高城れにの28歳の誕生日。前祝いの1発にもなった。巨人に連敗し今季6勝6敗のタイとなったが、佐藤輝がいる今年は巨人を恐れることはない。【石橋隆雄】

▼ルーキー佐藤輝が2試合連続の18号。巨人戦で2戦連発した新人は99年に2度記録した福留(中日)以来22年ぶりで、阪神の新人では初めて。ちなみに、「伝統の一戦」と称される同カードで2戦連発した新人は、巨人では54年広岡、98年高橋、01年阿部の3人おり、佐藤輝が4人目。

▼シーズン18本塁打は、球団の新人では69年田淵22本に次ぎ、80年岡田18本に並ぶ2位タイ。