阪神が連敗を3で止め、首位をがっちりキープした。0-0の2回、メル・ロハス・ジュニア外野手(31)が右打席初アーチとなる先制決勝の3号ソロ。5回には、バンテリンドームの天井に直撃する特大ファウルで規格外のパワーを見せつけた。チームは12度目の首位陥落危機だったが自力で回避。本領を発揮し始めた昨季の韓国2冠が、激しい外国人枠争いを勝ち抜き、逃げ切りVの使者になる勢いだ。

   ◇   ◇   ◇

ご機嫌なロハスが飛び跳ねた。ホームベース後ろで出迎えた筒井コーチとジャンプして肘タッチ。恒例の「虎メダル」を受け取ると、カメラに向かって両腕で力こぶを作る「マッスルポーズ」を披露した。ノリノリの演出で3連敗中の重苦しいムードを振り払った。

「この(中日との)シリーズは連敗していたので何とか取りたかった。最低でも塁にという気持ちで強く打てたし、幸運にもフェンスを越えてくれた」

2回2死の第1打席。左腕小笠原から来日初の「右打席弾」を放った。それも逆方向、広いバンテリンドームの右中間への一撃。前回5月11日の対戦で3打数無安打に抑え込まれた左腕に「やり返したい気持ちがあった」と会心のリベンジ成功だ。

劇場は続く。5回。またも右打席で小笠原の直球を打ち上げると、打球が天井を直撃した。左翼線の左、ファウル地域の天井に触れて落下したため、記録はファウル。しばらく球場のどよめきが収まらなかった。

仰天パワーに球場関係者もうなった。「珍しいですね。これまでも天井に当たったのは数回くらい。記憶にあるのはブランコと柳田のホームラン。ファウルでもすごいですよ」。NPB通算181発で元中日の主砲と、ソフトバンクの超人の名前しか挙がらないほど極めて異例で規格外な弾道。「ビックリしました」と言う本人は冷静だった。

前半戦打率0割台で終わった右打席では、時にバットを短く持ち、打撃練習では低いライナーを意識する。この日のポイントは「足」。第1打席前には何度も土を掘り、軸足となる右の足場を調整した。「人工芝とか土とか球場で違う。しっくり来るものを探してスパイクとの相性を探りながら」。小さな工夫の積み重ねが昨季、韓国で本塁打王&打点王を獲得した2冠の覚醒を導いている。

2軍ではマルテが4試合連続安打と順調で、ガンケルは先発要員で昇格予定。登録枠5、出場枠4の激しい争いに、後半戦打率3割1分3厘、2本塁打と絶好調のロハスが割り込んできた。矢野監督は「いい悩みだし、それがあること自体は良いこと。全体のことを考えて俺が判断させてもらう」と言った。ノリノリのロハスが、うれしい悩みの種になる。【中野椋】

 

▼阪神が中日に勝ち、首位陥落の恐れがある試合で、12戦連続でその危機を切り抜けた。21日時点で2位巨人と1・5ゲーム差ながら、22日阪神●なら52勝38敗3分けで勝率5割7分7厘7毛、巨人○なら48勝35敗10分けで5割7分8厘3毛。阪神は4月4日から守ってきた首位を、マイナス0・5ゲーム差で巨人に明け渡すところだった。巨人がDeNAと引き分けたため、ゲーム差は2に広がった。

◆阪神外国人事情 阪神には今季NPB最多で球団史上最多の外国人8人が在籍。現在1軍には守護神スアレス、後半戦から中継ぎの一角を担うアルカンタラ、野手はサンズ、ロハスの4人が登録されている。外国人選手の1軍登録数は5人だが、ベンチ入りは4人まで。ガンケルは26日DeNA戦に先発見込み。「不動の3番」マルテも2軍で昇格準備を進めている。エドワーズとチェンも控えており、激しいバトルが続いている。

◆バンテリンドームの特別グラウンドルール 天井までの高さは、一番高いところで64・3メートルある。打球がフェア地域上の天井に触れた場合はボールインプレーで、天井に挟まった場合は二塁打となる。ファウル地域上の天井は触れても、挟まっても当たった瞬間にファウルとなる。また、天井からの懸垂物は、外野フェア地域の9カ所に触れれば本塁打、ファウル地域はファウル、内野中央部分に触れればボールインプレー、挟まれば二塁打となる。ちなみに、グラウンドから屋根の最高地点の高さが一番高いのは、ペイペイドームと札幌ドームで68メートル、メットライフドームが64・5メートル。バンテリンドームは4番目で、東京ドーム61・69メートル、京セラドーム大阪は60メートルとなっている。