歴史的一戦に勝つ。9月の「猛虎リポート」は、今季から活動する女子野球クラブチーム「阪神タイガースWomen(ウイメン)」に注目します。

10月9日に千葉県内で開幕する全日本女子硬式クラブ野球選手権に初出場し、初戦となる2回戦で連覇を狙う西武と対戦。NPBのチームが運営する女子チーム同士が対戦するのは初めて。強豪を倒し優勝し、現在首位のタイガース1軍、2軍と3きょうだいVを目指す。

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阪神ファームの本拠地・鳴尾浜で、Womenナインは週1度の全体練習を行っている。紅白戦では盗塁、バントなど細かい野球に磨きをかけていた。主将の三浦伊織外野手(29)は「NPBと同じユニホームを着るという、夢みたいなことは今までなかった。着ている以上、責任を持ってプレーしたい」と話す。ホーム用のユニホームは男子のタイガースとほぼ同じデザイン。胸番号が入っていないくらいだ。黒のセカンドユニホームはWomenオリジナルのデザインだ。

メンバー18人のうち半分の9人は元女子プロ野球選手。三浦ら4人は第9回女子W杯の侍ジャパンに選出されるなど、実力者たちが集まっている。8月の全日本女子硬式野球選手権の準々決勝でクラブチームのエイジェックに0-1で敗れ、1度目の日本一のチャレンジは道半ばでついえた。三浦は「何もできずに終わってしまった。それまでは順風満帆だったが、負けたくないというチームの思いになった」と公式戦初黒星を受け止めた。元阪神選手の野原祐也監督(36)は「初めて負けて、選手の取り組む姿勢も変わってきた。何とか全国優勝をしたい」とナインの成長に期待する。

今秋の全日本女子硬式クラブ野球選手権では初戦で西武と初のNPB対戦を迎える。1年先に発足した西武には、侍ジャパンの中心的存在の里綾実投手(31)ら強力なメンバーがそろう。三浦は「正直、強いと思う。ちゃんとチーム力を高めて勝てれば」と意欲を燃やす。阪神Womenはプロではなくクラブチームで、メンバーは普段、仕事をしたり大学に通ったりしている。全体練習は週1度だけ。週3回、自分の予定に合わせ、午前か夜に個人練習をするしかなく、なかなかチームでできないもどかしさもある。

三浦は「室内練習場も使える。メニューも決められていて充実した練習はできている」というように、85年日本一メンバーの木戸克彦氏(60)らOBが練習を手伝い、指導もするなど、タイガースならではの強くなれる環境も整っている。いつかコロナ禍が収まれば、観客の入った甲子園でプレーしたいという夢を持って練習に励んでいる。

高校時代はテニス部でインターハイ4強の実績を持つ三浦は的確なミート力が武器で、女子プロ野球に在籍した全11シーズンで打率3割以上をマークした。「私、衰えていますよ。でも女子野球が自分だけのものでもなくなってきているんで。女子野球発展のためには1本でも多く安打を打ちたい」。タイガースの背番号「3」をつけたレジェンドは、新しい女子野球ファン、Womenファンを作る使命も背負っている。【石橋隆雄】

◆阪神タイガースWomenアラカルト

▽ルールなど ボール、ベース間の広さなどは男子と同じ。金属バットを使用。イニングは7イニング制。

▽注目選手 高塚南海外野手(24)は女子プロ野球時代に「みなみ」の登録名でファンから高い人気を集めた。173センチとチーム最長身で、長打力もトップクラス。右と左は違うが「Womenの佐藤輝明」になれる存在だ。

▽どんなチーム 三浦主将は「投手中心に守って、攻撃にリズムをつける感じ。守備がメイン」。野原監督は「投手中心のチームだと思っていたが、課題の打撃も成長してきた。考えての打撃練習をさせてきた」

▽女子大生選手 山本凉香内野手(22)は関学大準硬式野球部でも男子と一緒にプレーしている。昨秋の関西6大学準硬式野球リーグ史上初めて女子選手として公式戦にも出場している。