耐えた、こらえた、挟まった。追い詰められた阪神が中日と引き分けた。3-1の9回に1点差に迫られ、なお1死一、三塁。守護神スアレスが代打福留に浴びた鋭い打球が、左翼フェンスの隙間に直接スッポリ。はね返っていれば、あわやサヨナラ負けだったが、エンタイトル二塁打で3-3の同点と踏みとどまった。土壇場で怒濤(どとう)の攻撃を受けた矢野虎がラッキーな? 今季6度目となるドロー。首位ヤクルトが勝って順位変動はなくても、阪神にまだツキはある!?

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目を疑う珍現象がバンテリンドームで起こった。3-2と1点に迫られた9回1死一、三塁。阪神スアレスが6球目チェンジアップを代打福留に捉えられた。左翼方向に上がった打球は、フェンスにある開閉部分の溝にスッポリ。エンタイトル二塁打がコールされ、サヨナラの走者になる可能性があった一走・三ツ俣は三塁で足止め。同点までで、最後は申告敬遠を挟んで1死満塁から木下拓を153キロのツーシームで三塁併殺に仕留めて踏みとどまった。

「いやまあ、ギリギリね。何とか踏みとどまってくれたんでこれでも大きいと思う。負けるんと引き分けじゃ全然違う」

試合後に発した矢野監督の第一声がヒヤヒヤ、ドキドキの展開を物語っていた。フェンスをはね返った打球が思わぬ方向に転がっていれば…。本塁返球がそれていたら…。この世界でタラレバは禁句だが、試合がひっくり返っていた可能性は十分にある。

セ界トップ33セーブを誇るスアレスが先頭京田からまさかの3連打と振るわず、代打福留の二塁打で今季初めてセーブ機会失敗。16試合ぶりの失点だった。重要な試合が続く中で心配のタネではあるが、矢野監督は「スアちゃんがいなければこの位置にいない。そこで粘ってくれたというのは明日につなげられる要素ではある」と前を向く。

24日からは巨人3連戦に向かう。打線は8試合連続1桁安打だが「調子がどうこう言ってる場合ではない。みんなも必死にやってくれているし、みんな胸張って精いっぱいやっているっていうのは見える。全員の力じゃないと勝ちきるというところにはいきにくい」。大一番を前にして負けなかったことに意味がある。【桝井聡】

▼23日の中日-阪神戦で、打球が外野フェンスに挟まり、走者が2個の進塁を果たす珍しいプレーがあった。9回裏1死一、三塁で、打者福留はスアレスから左越えの一打を放った。打球はフェンスにある扉の端の溝のような部分を直撃し、そのまま挟まって動かなくなった。

公認野球規則では「2個の塁が与えられる場合」としていくつかの状況を明示。「フェアの打球が競技場のフェンス、スコアボード、灌木(かんぼく)、またはフェンスのつる草を抜けるか、その下をくぐるか、挟まって止まった場合」と定めている。このため三塁走者の加藤翔が生還。一塁走者の三ツ俣は三塁へ、打者走者の福留は二塁へそれぞれ進んだ。