いよいよ決戦の時が来た。優勝マジック2のヤクルトは10月26日に敵地でDeNAと対戦。2位阪神が敗れ、ヤクルトが勝利すると6年ぶり8度目のリーグ優勝が決まる。大一番に臨むナインの背中を、高津臣吾監督(52)の一言が力強く押す。

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神宮の選手ロッカールームに無言のゲキがある。「腹くくっていったれぃ!!」。白い紙に、黒文字でしたためられた高津監督直筆のエール。1字1字の止め、はね、はらいには、指揮官の気持ちが乗り移っているかのような力強さがある。

一言で悪い流れを断ち切った。19日から23日まで1分けを挟んで3連敗。阪神に0差まで迫られた。首位を走りながら、焦燥感が漂った24日巨人戦の前、突然張り紙が出現した。予告もなく、貼られるところを誰かが見たわけでもない。ただ、指揮官の筆跡ということは明らか。その“謎の”ゲキの前で選手はみな足を止めた。声に出す者、じっと見つめる者…。1人1人が、それぞれの形で心に留めた。気を引き締め直してこの一戦に勝利し、連敗をストップ。マジックを1つ減らして、2とした。試合後、高津監督は「また切り替えて全力で戦うだけ。そういう気持ちが勝つ近道というか、原動力だと思う」と言った。

勝利を目指すのみ。CS進出が決まった6日。「どんな手を使っても、と言ったらあれですけど、出し惜しみすることなく、悔い残すことなく全力で戦いたい」と覚悟を示した。前半戦先発を務めていた田口やスアレスをリリーフに配置転換。昨年まで守護神だった石山を、3回や5回など早めに投入することもあった。26日の予告先発の高梨も、中10日のマウンドとなるが、24日はベンチ入りし、ブルペンで肩を作る場面もあった。指揮官の覚悟は、ペナントレース終盤で何度も垣間見えた。目の前の試合をいかに勝つか-。それだけを見据え、最終盤の決戦に挑む。【湯本勝大】