多くのスター選手を発掘した日本ハム今成泰章(いまなり・やすあき)スカウトが2日午後8時35分、劇症型溶血性レンサ球菌感染症のため埼玉・朝霞市内の病院で死去した。66歳。3日、球団が発表した。プロ経験はないが、駒大卒業後に阪神スカウトとなり、03年からは日本ハムで計44年、天職を全う。ダルビッシュや大谷らを担当し、プロの世界に導いた。阪神時代から親交があった新庄剛志監督(50)も突然の訃報に接し、故人をしのんだ。

「マムシの今成」が静かに天国へ旅立った。今成スカウトは春季キャンプも例年通り、沖縄・名護を訪れて選手の動きなどを視察した。しかし2月下旬にキャンプ地から離れた後に体調が急変したもようで、2日夜に息を引き取った。「マムシ-」の異名は難交渉でも一瞬で相手の心をつかんで落とす姿から定着。自身はプロ経験がないが、選手の力量を見抜く眼力と人の心をつかむ人間力でスカウト人生を切り開いた。

多くのスター選手を発掘し、プロへ導いた。阪神では和田豊や桧山進次郎らを担当。日本ハムではダルビッシュや大谷らの獲得に携わった。「スカウティングと育成」を掲げるチームを支えてきた。

上位指名だけでなく、下位でも11年6位の上沢や14年8位の太田(現ヤクルト)など逸材を獲得。無名選手のポテンシャルにほれた際には、他球団のスカウトに見られたくないと“駆け引き”した。本人によれば、お目当ての選手の試合前に「(他球団の)スカウトに『他の球場で、いい試合がやっているよ』と言って全員、別会場へ移動させた」。幹部には他球団がノーマークであることを熱弁して「何位でもいいから(交渉権を)取ってくれ」とアピールし、下位指名にこぎ着けた。この熱意が、多くの縁をもたらした。

駒大時代は捕手で2度の大学日本一に輝きながら、故障でプロ入りは断念した。05年高校生ドラフトでは次男の亮太氏が日本ハムから指名され「息子にやっぱりプロに行ってほしかった」と喜んだ名スカウトは、惜しまれながら天命を全うした。【木下大輔】

◆劇症型溶血性レンサ球菌感染症 突発性ショックを引き起こす細菌感染症。人食いバクテリアとも呼ばれる。毎年、全国で600~900人の患者が確認されている。壊死(えし)性筋膜炎や多臓器不全を引き起こす。致死率は30%ときわめて高く、発症から48時間以内に死に至るなど症状の進行も早い。30歳以上の成人に多い特徴がある。

◆今成泰章(いまなり・やすあき)1955年(昭30)7月14日、東京生まれ。堀越-駒大。大学時代は捕手で卒業後の78年にスカウトとして阪神へ入団。99年から02年8月まではチーフスカウトを務めた。03年から日本ハムのスカウトを務め、主に関東地区や東北地区を担当。今季でスカウト生活は44年目だった。次男の亮太氏は日本ハム、阪神でプレーした。

◆葬儀日程 通夜は6日午後6~7時、一般会葬は同午後5~7時まで。告別式は7日午前10時半から。いずれも埼玉県富士見市下南畑70の1、しののめの里第3式場(【電話】049・275・3030)。喪主は長男優太(ゆうた)氏。