巨人にワイルド新守護神が誕生した。ドラフト1位の大勢投手(22)が4-2の9回にプロ初登板。デビュー登板で自己最速タイの158キロをマーク。1死から2連続安打と死球などで2死満塁を招いたが、木下を投ゴロに仕留めて無失点に抑えた。球界では82年山沖(阪急)以来40年ぶり、球団史上初の快挙となる新人の開幕戦セーブを記録した。巨人は3年連続で開幕戦白星スタートを切った。

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大勢がグラブをたたいてほえた。9回2死満塁。「不思議な力が出ました」。3万8156人の東京ドームから自然に沸き起こった巨人ファンの拍手に背中を押された。

中日木下への3球目。内角156キロで詰まらせた。転がってきたボールを両手で大事に捕球し、丁寧に一塁へ送球。開幕戦の勝利、そしてプロ初セーブが決まると感情があふれ出た。ガッツポーズを決め、満開の笑顔を咲かせた。お立ち台で「応援していただいている人と勝利を分かち合えて最高だなと思います」と壮観な景色を焼き付けた。

活躍を届けたい人がいる。その1人が中学時代に所属した氷上ボーイズのコーチで69歳で亡くなった足立信也さん。西脇工2年時にがんでこの世を去ったが、丹波弁でまくしたてる元気な姿は今も脳裏に浮かぶ。主要大会を終えた中3時の担当コーチで「僕に対して真っすぐに指導してくださっていた」と温かくも厳しい指導が思い出に残る。卒団時には「頑張れ大勢」と力強く記された書をもらった。関西国際大に進学後も寮の部屋に飾り「しんどい時に見て奮い立たせてました」と支えになった。

ドラフトで巨人に指名された直後の昨年11月、母いずみさんと氷上ボーイズの同期3人で、報告に行った。「翁田大勢」のサイン入りグッズをたくさん抱え、巨人ファンだった亡き恩師に贈った。心温かい気遣いに同コーチの娘・史絵さん(46)も「来てくださるとは思わなかった」と涙が止まらなかった。

遺族は「子どもたちの活躍をこれからも見ていてほしい」と願いから角膜の移植を決断した。今もどこかで、誰かの“目”になって生きている。「絶対的守護神になれるように、堂々とプレーしていきたいです」。足立コーチに、そして“大勢”の人へ-。この活躍は、必ず届いている。【小早川宗一郎】

▽大勢の父八寿男さん(54、背番号15のユニホームを着用し、東京ドームで応援)「すごく疲れました(笑い)。最後は思わず『うお!』と叫んでしまいました。大勢、よくやったな」

【大勢アラカルト】

▼生まれ 1999年(平11)6月29日、兵庫・多可町生まれ

▼サイズ 身長181センチ、体重88キロ

▼球種 独特な腕の角度から繰り出す最速158キロの直球が武器。大魔神・佐々木主浩氏に教わったフォークや、スライダー、ツーシームを駆使する

▼アスリート一家 兄・勝基さんは大勢の母校でもある西脇工が甲子園初出場を果たした13年夏のエース。姉・あかりさんは陸上女子3000メートルの岡山県記録を持つ

▼ワイルドルーキー 自然豊かな町に生まれ、幼少期から山や川が遊び場。魚を素手で捕まえたり、ランニングしていたら野生のシカと並走していたり

▼郷土愛 グラブには播州弁で大丈夫という意味の「べっちょない」と刺しゅうを入れた