矢野虎に光が見えない。阪神の開幕からの連敗は、95年以来27年ぶり、球団ワーストタイの5に伸びた。

【阪神】長いトンネル抜けられず…逆転負けで開幕5連敗 95年以来球団ワーストタイ記録

逆転負けから20分後。ミーティングを終えた矢野監督は苦悶(くもん)の表情を浮かべた。「みんなしんどいから、そこでなんとか。まあ(中野)拓夢がちょっと足を引っ張ったところもあったしね。ああいう1点は…。チームにも(伊藤)将司にもちょっと重かった」。感情を押し殺すように言った。

目を覆いたくなるシーンだった。1点リードの6回。0封してきた先発伊藤将が2死一、二塁のピンチ。続く坂倉の一塁強襲打で同点に追いつかれた。なお、一、二塁。会沢の右前打で勝ち越されると、続く末包が放った遊撃へのゴロを中野がまさかのトンネル…。痛恨の3点目献上に、虎ファンの悲鳴が渦巻いた。

開幕4試合は12球団で唯一無失策だったが、初失策が痛すぎるタイムリーエラー。8回にも大山の悪送球から失点。指揮官も「拓夢は下がって捕っているわけだし。(大山)悠輔だってね、しっかり投げればっていうところがあるんで。言い訳にはならない」と手厳しかった。解消されていなかった4年連続12球団最多失策の課題が、大事な場面で浮き彫りになった。

開幕5戦目で早くも8番の捕手以外の打順を大きく入れ替えたが、テコ入れも実らなかった。開幕から4試合連続安打の大山を5番に上げ、6番に今季初スタメンでロハスを起用。2番糸原、7番中野の新布陣を組んだ。「何かきっかけをつかんでもらえたらというところもあった」。5回にそのロハスの今季初本塁打で先制したが、8回まで4安打。9回に佐藤輝の適時打などで2点を返したが、時すでに遅し。井上ヘッドコーチは低調な打線に「負のオーラを払拭(ふっしょく)できていない。萎縮している」と思案顔だ。

矢野監督は自分に言い聞かせるように言った。「やれることは大きく変えられないけど、気持ちの部分で大きく変えることは1人1人の思いでできる。苦しいのはみんな苦しい。でも1人の『絶対変えてやる』という思いがつながれば、大きな力に変えられる。そういう思いでいくしかない」。明けない夜はないと、信じたい。【桝井聡】